日本の夏の風物詩といえば「蚊取り線香」ですね。
郷愁を誘われるような、あの独特で懐かしい香り。
近頃は、そんな昔ながらの暮らしの道具に再び注目が集まっているようです。
そこで今回は、蚊取り線香の効果的な置き場所や消し方、猫や犬への影響など、さまざまな疑問にお答えしていきます。
蚊取線香による人体への影響は?
蚊取り線香は、日本で昔から使われてきた虫除け道具です。
しかし、赤ちゃんやペットのいる部屋で使用することに問題はないのか、不安に感じている人も多いようですね。
蚊取り線香の成分や、赤ちゃんへの影響などを以下にまとめました。
主成分ピレスロイドの安全性は高い
一般的な蚊取り線香の主成分は「ピレスロイド」というものです。
ピレスロイドは、人間にも動物にも影響しない成分で、害虫にのみ殺虫作用が発揮されます。
ピレスロイドが人体に入っても、すぐに分解され、尿などで排出されます。
そのため、人が蚊取り線香の成分を吸い込んでも何ら影響はなく、生まれたばかりの赤ちゃんでも、妊婦さんでも問題ありません。
体に合わないこともある?
蚊取線香の殺虫成分は人間には無害ということがわかりました。
しかし、あの臭いや煙たさがどうも苦手で、頭痛や吐き気がするという人もいますね。
またその頭痛や吐き気の原因は、実はアレルギー症状だったということもあります。
安全とはいえ化学物質なので、化学物質過敏症の人は体に合わないということです。
そのような体質の場合は、蚊取り線香を使用するのはやめましょう。
体質なので、何回も使用していれば慣れるというものではないよ。
家族が訴えている場合にも必ず理解を示し、使用を控えるようにしよう。
心配な方には天然成分のものもある
健康に害はないピレスロイドですが、化合物であることは確かです。
「赤ちゃんや愛犬には、より刺激が少なく優しい素材のものを使いたい」と考える人のために、天然成分「ピレトリン」で虫除けする蚊取り線香もあります。
「ピレトリン」は化合物ではなく、天然の除虫菊という花の成分で、古くから蚊取り線香に使われていたものです。
ピレスロイドと同じように、害虫の神経を麻痺させる成分で、人間や動物には害のない安全性の高いものです。
蚊取り線香が効く範囲と時間は?
蚊取り線香を室内に置くと、どれくらいの範囲に効果がみられるのでしょうか?
また、蚊取り線香の燃焼持続時間もご紹介します。
殺虫効果は半径2メートル
蚊取り線香の煙が拡がって見えるところが、「殺虫効果」のある範囲の目安です。
それはおよそ、半径2メートルくらい(周囲6畳)といわれています。
6畳分くらい?
香りは遠くまでするのに、意外にせまいんだね。
確かに。しかし蚊取り線香は、煙や香りで蚊を殺すわけではありません。
有効成分のピレトリンは、燃えている先端から5~8mmの部分から出ており、そこが熱で気化することによって蚊を殺すのです。
ですから、当然遠くになるにつれて殺虫威力は弱まり、蚊を寄せ付けない程度の効き目になっていきます。
燃焼時間の目安は7時間くらい
一般的なサイズの蚊取り線香は、1巻きで平均7時間、燃焼します。
店頭には、主に3種類のサイズが販売されています。
使用シーンに合わせて、選んでみてはいかがでしょうか。
蚊取り線香の効果的な置き場所
蚊取り線香の効果的な置き方を、3つのポイントにまとめました。
- 風上に置く。
- 広い範囲には間隔を開けて、複数個置く。
- 足元に置く。
①風上に置く
蚊取り線香は、風上に置くのが基本です。
風上に置くことによって、有効成分が拡散しながら部屋全体に広がり、風下全体に効力を発揮します。
②広い範囲には間隔を開けて、複数個置く
広い範囲で虫除けしたい場合は、1個ではカバーしきれません。
前述したように、蚊取り線香の殺虫範囲は約半径2メートルなので、それを目安に、3メートルから4メートルほど離して、複数の蚊取り線香を置くのが効果的です。
各小部屋が独立している家でしたら、それぞれの部屋に置くことをおすすめします。
③足元に置く
殺虫成分は下から上へと拡散していきます。
小さなお子様やペットが触れる恐れがなかったら、蚊取線香は足元に置くようにしましょう。
もちろんあります。
ただし、殺虫範囲は蚊取り線香の周辺だけだと心得ましょう。
その場合は、複数個用意するか、「屋外専用」の強力な防虫線香も販売されています。
蚊取り線香の効果的な使い方
蚊取り線香の殺虫成分ピレスロイドには、殺虫効果そのもの以外にも、蚊の発生を予防する効果があります。
つまり、蚊取り線香を使用している場所には、蚊は卵を産みつけることができません。
この効果を利用して、蚊の発生しそうな場所(草木や水のある場所)には、蚊のシーズン前から蚊取り線香を使用しておくことで、発生そのものを予防できるということです。
今年は蚊取り線香を早めに焚いて、蚊の発生源を少なくすることから始めてみてはいかがでしょうか?
屋内・屋外の蚊の発生源対策については、以下の記事にまとめてあります。
蚊取り線香の最も簡単な消し方
蚊取り線香の消し方を、意外にも知らない人が多いようです。
水をかけて消火したり、短く折って使用している人も多いようですね。
ですが折らなくても、もっと簡単な消し方があります。
消したくなったら、燃えてる先端を、金属の縁(線香皿のふち)に触れさせておけば簡単に消えます。
これは、線香の熱を「金属」が放熱してくれるためです。
線香立てで浮かせるスタイルや、吊るすスタイルで使用している場合は、先端付近をクリップやヘアピンで挟んでおけば、すぐに消火されます。
そもそも蚊取り線香は殺虫効果はあるの?
蚊取り線香は、まぎれもなく殺虫効果はあります。
しかし蚊取線香は、蚊を遠ざけるだけで「蚊を殺す効果はない」という話を聞いたことはありませんか?
煙と臭いで逃げて行くだけだという説です。
現在一般的な蚊取り線香には、ピレスロイドという化合物を使用しています。
ピレスロイドは神経毒なので、全身麻痺による飛行困難からそのまま死ぬわけなのですが、一旦落ちた付近が低濃度だったため、復活して飛んでいくことも、ままあります。
また、殺虫効果のある半径2メートルより遠い範囲で、蚊が弱って床に落ちているだけ、という場面を目にすることもありますね。
それを見て、「殺虫効果はない、よけるだけ」という説が生まれ、それを信じている人が多いということです。
蚊以外にも効果があるの?
蚊取り線香の有効成分は、虫全般に効果があります。
しかしあくまでも蚊を基準にした濃度の殺虫成分で設計されています。
ですから、蚊取線香で効果が期待できるのは、小さなハエなどの、小さい虫までです。
ムカデやゴキブリに効くほどの強力な効果はありません。
また地面を這うタイプの虫には、煙ではなくスプレーで直接ふきかけないと効果はないようです。
蚊以外の虫に悩まされているのであれば、専用の虫退治グッズを使うほうが、効率的かつ確実です。
ペット(犬・猫・鳥など)への影響は?
蚊取り線香は、人体に影響がなくても、ペットのいる部屋で使用しても問題はないのか、不安に感じている人も多いのではないでしょうか?
蚊取り線香の成分や煙による、ペットへの影響などをチェックしていきましょう。
犬・猫・鳥には大丈夫
蚊取り線香の殺虫成分ピレスロイドは、哺乳類(犬・猫・ハムスターなど)や鳥には無害で、安心して使用しても良いとされています。
ただし、注意も必要です。
もともと何かのアレルギーを持っているペットや、シーズーやペキニーズ、パグなどの短頭種は呼吸器系が弱いため、トラブルを起こしてしまう可能性もあります。
少しでも不自然な呼吸をしていたり、体調が悪くなる様子なら、蚊取り線香は避けたほうが良いでしょう。
使用NGなペットもいる
蚊取り線香は、昆虫・爬虫類・両生類の神経に効く殺虫剤です。
また昆虫以外でも、魚類(金魚・熱帯魚・メダカ)にも効いてしまいます。
これらのペットを飼っている部屋では、蚊取り線香は使用しないよう喚起されています。
ペット用の蚊取り線香もある
犬、猫がかかる「フィラリア」という病気はご存知かと思います。
フィラリアとは寄生虫のことで、犬や猫が蚊にさされてフィラリアになってしまわないよう、ペット用の蚊取り線香も販売されています。
天然由来の成分から作られているものもあり、間違って食べたり灰をなめたりしてしまっても有害性は少なく、より安全になっています。
蚊取り線香を使うときの注意点
蚊取り線香は、触れると熱く、煙も出るため、使用するときは注意が必要です。
この項では、具体的に気を付けるべきポイントを紹介します。
窓を開ける
蚊取り線香の有効成分が逃げて行かないように、「窓を開けない方がよいのではないか」と考える人もいるようです。
ですが、蚊取り線香を室内で使用する場合は、必ず窓を開けて下さい。
そして風通しの良い状態にして「風上」に置きましょう。
部屋を閉め切ってしまうと、煙がこもって目やのどに刺激を感じるだけでなく、咳や嘔吐などの中毒症状が出ることもあります。
煙が直接かからないようにする
蚊取り線香の「煙」を直接吸い込むと、喉が痛くなったり咳が出たりすることがあります。
そのため、人に煙が直接かからないように注意しましょう。
もしアレルギーや喘息などの疾患を持っている場合は、悪化する可能性もありますので、使用は控えることをおすすめします。
赤ちゃんの近くに置かない
蚊取り線香は、ぐるぐる渦巻き状で面白い形のため、赤ちゃんにとってはおもちゃに見えてしまう可能性があります。
やけどの恐れだけでなく、赤ちゃんは何でも口に入れてしまいやすいため、蚊取り線香を食べてしまうこともあります。
必ず「子どもの手が届かない場所に設置・保管」するようにしましょう。
赤ちゃんが食べてしまったら?
なめる・しゃぶる・ひとかけら食べる
その程度であれば、うがいをさせて様子を見ましょう。
殺虫剤の量はそれほど多くないため、その程度であれば中毒の心配はほぼ無いとされています。
ただし、体質によっては、皮膚炎などのアレルギー反応が出る可能性があります。
また大量に食べた場合には、嘔吐・腹痛・下痢などが見られることもあるので、注意して観察してみて下さい。
このような症状が出た場合は、医療機関を受診しましょう。
おわりに
昔ながらの蚊取り線香ですが、その効果は本当に優れています。
正しく使えばより高い効果が得られますので、今年はしっかり対策をとっておきたいですね。
夏だけではなく、晩秋に発生する強力な蚊の対策にもつながります。
こまめに換気を行いながら、これからも安全に蚊取り線香を使用していきましょう!