秋になると、「文化勲章」と「文化功労者」が発表されますね。
どちらも、文化の振興に功績のあった人をたたえて表彰されるものですが、両者の違いは一体何なのでしょう?
今回は、「文化勲章」と「文化功労者」の違いや、両者のお金にまつわるお話など、わかりやすくご紹介していきたいと思います。
文化勲章とは?

まずは、日本の勲章の一つ『文化勲章』とは何なのか見ていきましょう。
文化勲章の意味
文化勲章とは、文化・芸術・科学技術・スポーツなどの分野で、素晴らしい功績をあげた人に授与される勲章のことです。
毎年11月3日の文化の日に、皇居のなかで親授式が行われ、天皇陛下から、勲章と賞状が手渡されます。
『文化勲章親授式』は毎年ニュースでも取り上げられますので、ご存じの方は多いかもしれませんね。
歴代の文化勲章の受章者は、一体どんな方が選ばれているのでしょう?
その一覧は、こちらをご参照ください。
文化、芸術、科学技術での社会貢献など、各界からのラインナップを見ても、文化の多様さが感じられますね!
日本の勲章には種類があり、文化勲章のほかにも、最高ランクの「大勲位菊花大綬章」から、「桐花大綬章」「旭日章」「瑞宝章」などがあります。
文化勲章ができたのはいつ?
文化勲章が制定されたのは、1937年(昭和12年)。
この年は日中戦争が始まった年です。
敗戦後は連合国の指令でほとんどの勲章の授与が中止されたのですが、文化勲章のみは純粋に芸術分野の章であることから、授与が続けられてきました。
制定以来、87年にわたって続いている文化勲章。
今でも文化の日が近づくとニュースで受章者が発表され、わたしたちの関心を集めていますね。
文化勲章は誰がどうやって決めているの?
文化勲章の選考は、原則として、前年度までの「文化功労者」の中から選ばれます。
つまり、文化勲章を授与されるためには、まずは「文化功労者」になっている必要があるのです。
文化勲章の候補者を選ぶのは、「文化功労者選考分科会」の美術・文芸・理工・芸能・生物などの、10名の専門家たちです。
ただ、毎年のように同じメンバーが選考してしまうと、どうしても偏った選考になってしまうでしょう。
ですので、選考するメンバーは、毎年全員入れ替えられます。
その選考メンバーたちが、どのような話し合いをしたのかは公開されません。
文化功労者からの文化勲章の選考は、このような流れです。
- 文化功労者選考分科会の委員全員が話し合って5名ほど選出する。
- 文部科学大臣に報告する。
- 内閣総理大臣に推薦する。
- 内閣府賞勲局で審査する。
- 閣議によって決定する。
- 天皇陛下に報告する。
そして11月3日(文化の日)に正式に発令され、『文化勲章親授式』という式典が執り行われます。
式典では、皇居において天皇陛下から勲章と賞状が手渡されます。
さらに後日、天皇陛下による「お茶会」へのお招きがあります。
文化勲章受章者一同と、文化功労者一同は、皇居にて分散して着席し、皇族の方々といわゆる食事会をしながら、歓談のひとときを楽しむのが恒例となっています。
文化功労者じゃないのに文化勲章を受章した例もある
例外として、前年度までに文化功労者になっていなくても、文化勲章に値する人物と認められた場合に選ばれることがあります。
この場合は、併せて「文化功労者」にもなります。
前例としては、2010年にノーベル化学賞に決まった根岸英一氏や鈴木章氏。
ノーベル賞受賞と同じ年に文化功労者に選ばれ、同時に文化勲章も授与されました。
文化勲章はどんなデザインなの?
出典;https://ja.wikipedia.org
勲章は、日本の植物「橘」の花がデザインされ、その中央には、3つの曲玉が置かれています。
橘は常緑樹で、年中緑の葉を見ることができる植物。
その変わらない姿は、文化の永久性に通じることから、文化勲章のデザインに採用されたそうです。
この文化勲章は、金メダルのように首からかけるスタイルで、和装にも似合うようにできています。
例えば、欧州の勲章は、赤や青といった派手な原色の綬(リボン)が多いですが、日本の文化勲章の綬は上品な淡紫色で、日本の品位と知性の香る装いになります。
毎年12月10日には、ストックホルムでノーベル賞の授賞式が行われますね。
日本人受賞者は文化勲章を身に着けていることが慣例になっていますので、ぜひ胸元に注目してご覧になってくださいね。
ちなみに、文化勲章制定当初は、「桜」の花で考案されていたそうです。
その図案を昭和天皇にお見せしたところ、「花は桜木と言うように、武人の勲章としては良いが、桜は散るので、永遠に発展する文化の章にはそぐわない」と、昭和天皇が反対された、というエピソードが残されています。
文化功労者とは?
出典;https://www.mext.go.jp
文化功労者は、文化の向上発達に特に功績をあげた人が選ばれるものです。
「文化功労者選考分科会」の話し合いによって選出された中から、文部科学大臣が決定し、毎年20名が選ばれています。
こちらも文化勲章の選考と同じく、推挙に至った経緯は公開されません。
ですから、受章者はまさに「自分が選ばれるなんて青天の霹靂だった」と驚く方が多いようです。
選ばれた文化功労者には、文化勲章親授式の翌日の11月4日、東京都内のホテルにて『文化功労者顕彰式』が執り行われます。
顕彰式では、文部科学大臣の手によって、文化功労者ひとりひとりに顕彰状が手渡されます。
さらに後日、天皇陛下による「お茶会」へのお招きがあります。
文化勲章受章者一同と、文化功労者一同は、皇居にて分散して着席し、皇族の方々といわゆる食事会をしながら、歓談のひとときを楽しむのが恒例となっています。
文化功労者は、文化勲章に次ぐ栄誉となっています。
賞金や年金、お金はいくらもらえるの?

これだけ国の文化の振興に貢献し、名誉ある受章をしたのですから、金一封があってもおかしくなさそうですね!
この項では、ちょっと気になる、文化勲章と文化功労者の「お金」についてご紹介します。
文化勲章のお金は?
文化勲章は、お金や賞品のようなお金は、一切もらえません。
文化勲章は1937年(昭和12年)に制定され、当初は終身年金が支給されていましたが、日本が財政難に陥ったことで、1941年(昭和16年)に廃止されてしまいました。
さらに戦後の1947年(昭和22年)、日本国憲法において、勲章への特権を禁止することを定めました。
栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。 栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
引用;日本国憲法第14条第3項
これはつまり、「栄誉は称えるけどお金は出さないよ」という趣旨の規定です。
でも大丈夫です。実質、お金はもらえます。
次の文化功労者のお金について見ていきましょう。
文化功労者のお金は?
文化功労者は、賞金などの金一封はありませんが、年金が支給されます。
これが、文化勲章と文化功労者の決定的な違いです。
年金は終身年金で、その人が亡くなるまでずっと年額350万円がもらえます。
これは、もらっている年金に加えて350万が生涯もらえるということです。
功労金はご褒美ではありますが、かなりの大盤振る舞いですね!
ちなみに2020年度の時点で233名の文化功労者がおり、総額では年間8億1550万円とのことです。
となると、一体誰がもらってるの?と気になる方も多いと思いますので、こちらをご参照ください。
ここで、おや?と思った方もいると思います。
そう、文化勲章の受章者は、前年度までの文化功労者のなかから決める、という仕組みになっています。
つまり、法律により一円ももらえない文化勲章ですが、実質、文化功労者としての年金350万円が支給され続けているということになります。
これは、文化に貢献してくれた人を報いたいという意図から、あとから『文化功労者制度』という別の制度を創設し、年金が支給される仕組みを作ったのです。
この制度のおかげで、文化勲章の受章者は、前年度までの文化功労者のなかから決めることになり、文化勲章でも年金が手に入ることになりました。
ただしこういった仕組みは、名前を変えただけで結局お金の権利を与えてるのだから憲法違反だ、という声も多くあるようです。
おわりに
文化勲章と文化功労者の決定的な違いは「お金」がもらえるか否か。
でもそれは法律上での違いだけで、実質お金はどちらも同額もらえるのでした。
日本には、社会や多くの人のために重要な仕事をした人、誰かを助けるために力を尽くした人、長年こつこつ大切な仕事を頑張ってきた人がたくさんいます。
今年は一体誰に光が当てられるのでしょうか。
11月3日の文化の日には、ぜひ注目してみてくださいね。