ビジネスシーンなどでよく使う「お疲れ様です」や「ご苦労様です」という言葉。
目上の人にご苦労様なんて言っていいのかな?と悩むことはありませんか?
今回は、「お疲れ様」「ご苦労様」の使い分けについて、一般的に失礼に当たらない言葉をご紹介していきます。
「お疲れ様」「ご苦労様」の使い分けは?
「お疲れ様」「ご苦労様」は、いずれも相手の苦労をねぎらう言葉です。
その語源はわかっていませんが、明治時代ごろに交わされるようになったとされる日本独自の挨拶文化です。
同じ意味をもつ2種類の言葉ですが、使う相手を間違えると、相手は気分を害してしまう可能性があります。
そこで、「お疲れ様」と「ご苦労様」の違いを知り、もう迷わずに自然と挨拶できるよう身に付けていきましょう!
お疲れ様
目上の人にも、目下の下にも、どちらにも使えるのが「お疲れ様」です。
会社の廊下ですれ違うときや、営業から戻った社員に「お疲れ様です」と、挨拶のように声をかけ合ったりもします。
仲の良い同僚や同期には「お疲れ!」なんて言い合うこともありますよね。
「お疲れ様」はどちらかというと、社内・内輪間で使用することが多いです。
例えば、電話で社内の人と話す場合は「お疲れ様です」と言いますが、社外の人(取引先など)には「お世話になっております」と言いますね。
社外の人とは、何か作業を共にした、会議を共にした、といった場合には、「お疲れ様でございました」と敬語でねぎらいの言葉を使うこともあります。
ご苦労様
目上の人が、目下の人(後輩や年下)に対して使うのが「ご苦労様」です。
主君が家来に「ご苦労であった」と言うような、上から目線のニュアンスが含んでいることが理由です。
ちなみに、「お疲れ様」のように、挨拶で使われることはありません。
もともと「ご苦労様」は、目下の人が目上の人をねぎらう言葉だった!?
もともと「ご苦労様」という言葉は、江戸時代に、目下である家来から、目上である主君に対して「ご苦労この上ないことです」などと言って、用いられていた言葉でした。
今とは真逆ですよね。
でも、よく時代劇で、主君が家来の奉公をねぎらう際に「うむ、ご苦労であった」と声をかけるシーンを見たことがあるよ?
実はこれ、リアルでは「ご苦労であった」ではなく「大儀であった」という言葉が使われていたそうです。
明治時代になると、「大儀であった」という表現に古臭さを感じたことで、「ご苦労」という表現へと変わっていったとされています。
上の者が使う「ご苦労」のやりとりが、少しづつ軍隊の中で広がり、目上の者が目下に対して使う挨拶となって、市民にも定着していったとみられています。
つまり当時は、目上から目下は「ご苦労」、目下から目上には「ご苦労様です」と、上下関係なく使われていたようです。
昭和後期~平成に入った頃から、「ご苦労様を目上に言ったら失礼」という認識が徐々に広まったのですが、なぜそのような認識になったかはわかっていません。
その流れから、1988年の『学研国語大辞典』に、「ご苦労」は「目上の人に言うのは失礼とされる」という記述がされました。
それから多くの辞典にも、同様の文言が追加記述されるようになったようです。
お疲れ様・ご苦労様の仲間「お世話様」とは?
「お疲れ様」「ご苦労様」の類語に、「お世話様」がありますよね。
これも、相手をねぎらう言葉ですが、お世話になった相手に礼をするニュアンスも含まれています。
またこれには「ご苦労様」と同様のニュアンスが含まれているため、ビジネスシーンで使われることは少なく、普段の生活で使われることが多いです。
例えば、宅配便を届けてくれた配達員さんや、対応してくれた店員さん、マンションの掃除をしてくれた管理人さんなどに、使われたりしますね。
「お世話になっております」は?
一方、「お世話になっております」という言葉は、「お世話様」とは違います。
目上の人や取引先の方に対して、お礼を述べる挨拶として使うものです。
目上の人や取引先から来た電話に「お世話様です」と言ってしまうと、相手によっては気分を害されることがあります。
ビジネスシーンでは「お世話様です」という言葉は使わずに、「お世話になっております」といった言葉を、シーンに応じて正しく使い分けましょう。
「お疲れ様」「ご苦労様」を英語では?海外でも使い分けはあるの?
「お疲れ様」も「ご苦労様」も、日本独自のいたわりの表現です。
つまり結論からいうと、お疲れ様などの直訳語となる英語はないのです。
例えば、何かやり遂げた際に「お疲れ様」「ご苦労様」という時には、
といったものが挙げられます。
これはどれも「よくやった!」というような表現です。
ただ、日本のように挨拶として、すれ違いざまに気軽に声をかけあう、「お疲れ様」「ご苦労様」のニュアンスとは、また違いますね。
似たような挨拶を再現するなら、「Hello!」「How are you?」「How’s it going?」などを使うと良いでしょう。
また、帰り際の「お疲れ様」「ご苦労様」を再現するなら、「See you tomorrow!」「Have a good evening!」などが、ねぎらいのニュアンスを伝えてくれます。
おわりに
時代の流れとともに、言葉の意味や使い方も、変化していくものなのですね。
「ご苦労様です」と言われて、気分を害する人もいますので、今の使い分けを知っておくことが大切なようです。
立場によって「お疲れ様」「ご苦労様」なのか明確にし、気持ちよく思いを伝えていきましょう。