青森県八戸地方に伝えられる、春を呼ぶ行事「八戸えんぶり」。五穀豊穣の願いを込めて踊りの大集団が町を行く姿には、目を引き付けられますね!
今回は、みちのく五大雪まつりの1つ「八戸えんぶり」についてご紹介していきます。
八戸えんぶりとは?
「えんぶり」とは、その年の豊作を祈願する田植踊りの一種です。
青森、宮城、山形、岩手、福島(秋田を除く東北5県)で、古くから開催されている地方芸能です。
農耕期の短い雪国は豊作を願う思いも大きく、冬の間眠っている田の神をゆさぶることで春を呼び覚まし、五穀豊穣を願う意味が込められています。
なかでも青森県八戸市のえんぶりは最も盛大で、かつ趣を異にした田植祭りといわれています。
3~5人の踊り手と、囃子方、唄い手など、合わせて20~30人ほどで構成されたえんぶり組(約33組)が、長者山の新羅神社にて豊作を祈願し、その後八戸市内さまざまな場所でえんぶりを披露するものです。
なんといっても、主役の太夫と呼ばれる踊り手が、農耕を助ける馬を象徴する大きな烏帽子をかぶって雪の中で優雅に舞う姿が、この八戸えんぶりの大きな特徴です。
八戸えんぶりは、国の重要無形民俗文化財に指定されているほか、みちのく五大雪まつりにも数えられています。
まだ雪の融けきらない時節に行われる八戸のえんぶりには、全国から毎年30万人以上もの見物客が訪れ、白い息を吐きながら一足早い春を告げる舞を堪能しています。
八戸えんぶりの歴史
八戸えんぶりの歴史は大変古く、およそ800年もの伝統をもっているため、その起源は伝説も含めて様々な説があります。
根城南部の祖・南部実長の作男頭の演技に始まったとか、南部の大祖・南部光行の入部伝説に由来したとか、蝦夷地へ落ちのびたと伝えられる源義経の一行が、この地方の豪族や農民に示威行動をして民心を鎮めたことに発祥した、などという説があります。
しかし稲作が移入されて豊作を予祝するようになって生まれたと考えるのが自然な由来といえます。
そもそもこのお祭りは豊耕予祝のための小正月行事でしたが、新羅神社の豊年祭に変わり、これが明治の旧暦廃止によって伊勢神宮記念祭にあたる現在の日どりとなりました。
江戸時代の随筆家・菅江真澄は『奥の手風俗』という作品の中で、八戸の「えんぶり」を見たことについて記述しているのですが、それによると、えんぶりは女性が男性の格好をして踊ったものと記しています。
明治以降、男性的な踊りと思われてきたえんぶりですが、昭和49年八戸で女性がえんぶりを行ったことで、多くの人々を驚かせたといいます。
明治初期は120組ものえんぶり組が参加したとされていますが、近年では33組ほどにまで減少してしまいました。
しかしながらその見応えは衰えておらず、各地区のえんぶり組は師匠から弟子へと確実に受け継がれ、今も八戸地域の人々にとって欠かせない誇りとなっています。
2020年 八戸えんぶりの日程・開催時間など
今年の八戸えんぶりは、
2/17(月)~2/20(木)の4日間行われます。
お祭りの簡単な情報をまとめました。
八戸えんぶり(2020年) | |
日程 | 2020年2月17日(月)~2月20日(木) ※毎年同日 |
開催時間 | えんぶり行列・一斉摺り/17日10:00~、御前えんぶり/17日12:15~、えんぶり一般公開/19日~20日13:00~、14:00~ |
開催場所 | 八戸市中心街、八戸市庁前市民広場 ほか |
料金 | 無料(一部有料) |
住所 | 青森県八戸市内丸 |
マップ | |
お問合せ | 0178-70-1110(一般財団法人 VISITはちのへ) |
公式HP | https://visithachinohe.com |
駐車場 | なし(近隣の有料駐車場利用 ) |
雨天時の場合は?
小雨決行です。お天気が不安定な場合は雨具を持って行きましょう!
荒天の場合は中止や、スケジュールの一部が変更となる場合がありますので、お天気によってはお出かけ前にお問い合わせください。
お問合せTEL:0178-70-1110(一般財団法人 VISITはちのへ)
八戸えんぶりの会場マップ
八戸えんぶりで期間中は、市庁前市民広場、八戸市公民館、更上閣など市内各所で公演が行われます。
以下の会場案内図を参考に、その多彩な行事を見に足を運んでみましょう!
2020年の会場案内図はこちらをご覧ください。
出典;https://www.daily-tohoku.news
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八戸えんぶりのイベント情報
八戸えんぶりが行われる4日間の主なスケジュールを以下にまとめました。
2月17日(月)
時間 | イベント | 場所 |
7:00~ | 奉納摺り | 長者山新羅神社 |
8:00~9:00 | えんぶり撮影会 | 〃 |
10:00~ | えんぶり行列 | 鍛冶町~ |
10:40~11:20 | 一斉摺り | 十三日町・三日町・六日町・ヤグラ横町 |
行列終了後 | 参拝 | 三八城神社 |
12:15~ | 御前えんぶり | 市庁前市民広場 |
13:00~16:00 | えんぶり公演(有料) | 八戸市公民館 |
・16:00~ ・18:00~ ・20:00~ |
お庭えんぶり(有料・要予約) | 更上閣 |
17:00~17:45 | ふるさとの歌ステージ | 市庁前市民広場 |
17:45~ | かがり火点火 | 〃 |
・18:00~ ・19:00~ ・20:00~ |
かがり火えんぶり | 〃 |
2月18日(火)
時間 | イベント | 場所 |
11:00~12:00 | 史跡根城えんぶり撮影会(入場料250円) | 史跡根城の広場 |
13:00~16:00 | えんぶり公演(有料) | 八戸市公民館 |
・16:00~ ・18:00~ ・20:00~ |
お庭えんぶり(有料・要予約) | 更上閣 |
17:00~18:00 | ふるさとの歌ステージ | 市庁前市民広場 |
・18:00~ ・19:00~ ・20:00~ |
かがり火えんぶり | 〃 |
2月19日(水)
時間 | イベント | 場所 |
11:00~12:00 | 史跡根城えんぶり撮影会(申込不要・入場料250円) | 史跡根城の広場 |
・13:00~ ・14:00~ |
えんぶり一般公開 | 市庁前市民広場 |
・17:00~ ・19:00~ |
お庭えんぶり(有料・要予約) | 更上閣 |
17:00~18:00 | ふるさとの歌ステージ | 市庁前市民広場 |
・18:00~ ・19:00~ ・20:00~ |
かがり火えんぶり | 〃 |
2月20日(木)
時間 | イベント | 場所 |
・13:00~ ・14:00~ |
えんぶり一般公開 | 市庁前市民広場 |
・17:00~ ・19:00~ |
お庭えんぶり(有料・要予約) | 更上閣 |
17:00~18:00 | ふるさとの歌ステージ | 市庁前市民広場 |
・18:00~ ・19:00~ ・20:00~ |
かがり火えんぶり | 〃 |
八戸まちなか広場「マチニワ」でも!
期間中は、青森県八戸市三日町にあるまちなか広場「マチニワ」でも、えんぶりを見ることができます。
温かい飲み物や軽食の販売や、ミニえぼしづくり体験など、えんぶりに関するイベントが盛りだくさん行われますので、ぜひ足を運んでみましょう!
【「えんぶり公演 in マチニワ」公演日程】
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八戸えんぶりの見どころは?
八戸えんぶりの見どころについてご紹介します。
まずは、八戸えんぶりの行事の雰囲気がわかる動画がありますので、チェックしてみましょう。
八戸独特の衣装と舞
「えんぶり」という語源は、田の面を平らにならす農具「杁」からきています。
2メートルほどの板に柄をつけたもので、えんぶりという名はこの農具を手に持って舞ったことから始まったといわれています。
現在はその「杁」ではなく、演舞用に簡素化し鳴り物をつけた「ジャンギ」「カンダイ」あるいは「ナリゴ」といった棒を用いています。
えんぶりの舞手(踊り手)を、太夫といいます。
太夫は農耕を助ける馬を象徴する大きな烏帽子をかぶって優雅に舞います。
八戸えんぶりの烏帽子は、和紙を何枚も重ねて漆を塗って仕上げられた芸術品で、舞楽の鳥甲を思わせるほどに美しい彩色にいろどられています。
その烏帽子には、亀鶴や恵比寿などめでたい絵が描かれており、そのたてがみには田の神が降りてくるといわれています。
すなわちこの烏帽子をかぶった太夫は、農夫であるだけでなく、馬でもあり、田の神でもあります。
そんな太夫は3~5人で編成され、豊年祭と書いた旗持ちを先頭に、太夫、笛、太鼓、手平金、歌い手など、合わせて15~20人が1組となって市内を回ります。
華やかにきらめく烏帽子を被って雪の中で優雅に舞う光景は、この八戸えんぶりの大きな魅力です。
八戸えんぶりは2系統
八戸えんぶりには、「ながえんぶり」と「どうさいえんぶり」があります。
「ながえんぶり」は古くからの形を保っているえんぶりで、歌や仕草がゆったりと悠長です。
烏帽子に赤い牡丹の花がついているのは、藤九郎と呼ばれる舞のリーダーです。
「どうさいえんぶり」は、テンポが早くて勇壮活発です。
烏帽子に前髪がついているのが特徴です。
ジャンギと呼ばれる鳴り物のついた棒を持ち、「どうさい」と掛け声をかけながらダイナミックに踊ります。
いずれも、衣装や持ち物だけでなく、摺りはじめの太鼓の音などを比べてみると面白さも増していきます。
ぜひ自分好みのえんぶりを見つけてみて下さいね。
奉納摺り
初日2月17日の早朝に、33組の全えんぶり組が勢揃いし、長者山新羅神社の本殿にて「摺り」を奉納します。
この踊りは、大地を摺るようにして踊るので、この芸能を演じることを「えんぶりを摺る」と言っています。
神前で行われるえんぶりは、えんぶり本来の厳かな雰囲気で行われ、凍てつく大地を摺り、春を目覚めさせるような舞を堪能することができます。
【奉納摺り】
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えんぶり行列・一斉摺り
長者山新羅神社にて奉納摺りが終わると、各えんぶり組は八戸市街地へと行列をなして繰り出していきます。
市の中心街や十三日町、三日町、六日町などに通りかかると、花火を合図に一斉にえんぶり摺りを披露します。
八戸えんぶりの最大の目玉ともいえる一斉摺りは大人気です。
行列はお昼ごろ三八城神社の境内に入り、簡単な奉納摺りを演じ、参拝が終わると街に散っていきます。
【えんぶり行列→一斉摺り】
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御前えんぶり
その昔、殿様の前で踊ったという「御前えんぶり」。
現代では、八戸市長はじめ関係者の前でえんぶりを披露するものです。
えんぶり組は毎年当番制で7組が披露されます。
もちろん一般客も無料で観覧できますので、じっくり見たい方はおすすめです。
【御前えんぶり】
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かがり火えんぶり
夜に行われるえんぶりです。
かがり火に照らされながら、烏帽子がきらめく大夫の舞を見ることができ、昼の賑わいも一息ついて冬の夜空に響きわたる唄とお囃子は情緒あふれます。
昼の豪華なえんぶりと、夜の華麗なえんぶり。
同じえんぶりを二度楽しむ贅沢を、ぜひご堪能下さい。
【かがり火えんぶり】
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史跡根城えんぶり撮影会
写真愛好家の方々に非常に人気があるのが、史跡根城えんぶり撮影会です。
日本百名城にも選ばれている根城の本丸主殿前で、八戸えんぶりのダイナミックな撮影をすることができます。
また同時期に、敷地内の八戸市博物館では企画展「えんぶり展」も開催していますので、こちらも併せて楽しむことができます。
【史跡根城えんぶり撮影会】事前申込不要
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祝福芸
えんぶりの合間には、恵比寿舞や、松の舞、喜び舞、大黒舞、えんこえんこなどといった色々な付属芸能が行われます。
これは農民たちが田の神と一緒に楽しむという趣向になっています。
とくに子供が演じる「えんこえんこ」は、豆ぼりの手ぬぐいに、ねんねこの様な羽織を着て銭太鼓を叩きながら踊るもので、新雪に映えてそれは可愛らしいものです。
そんな明るく楽しい祝福芸も、えんぶりの魅力の一つです。
「えんぶり公演」「お庭えんぶり」チケットは?
八戸市公民館のステージ上で、えんぶりの魅力をじっくり鑑賞できる「えんぶり公演」。
そして夜の更上閣で、贅沢にえんぶりを観覧できる「お庭えんぶり」。
どちらも大変人気ですので、観覧をご希望の方は早めにアクションしましょう。
えんぶり公演チケット情報
【えんぶり公演日程】
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えんぶり公演 チケット情報 | |
販売開始 | 2019年12月17日 10:00~ |
入場料金 |
※小学生以下無料 |
購入場所 |
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詳細HP | https://visithachinohe.com |
お庭えんぶりチケット情報
【お庭えんぶり日程】
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お庭えんぶり | |
販売開始 | 2020年1月14日(火)10:00~ |
入場料金 | 全席指定(予約制)
※甘酒と八戸せんべい汁つきです。 |
購入場所 |
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詳細HP | https://visithachinohe.com |
アクセス・駐車場について
八戸えんぶりは市内各所で行われますが、ここでは主な開催地である八戸市中心街「八戸市庁」へのアクセス方法をご紹介します。
電車の場合
JR八戸線「本八戸駅」下車後、徒歩10分です。
車の場合
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八戸えんぶりでは、専用の臨時・特設駐車場がありません。
そのためお車を利用する場合は、周辺の有料駐車場を利用することになります。
会場となる市街地にはコインパーキングなど含め有料駐車場が複数あります。期間中は混雑が予想されますので、早めの現地入りを目指すことをおすすめします。
交通規制について
八戸えんぶり初日の2月17日(月)のみ、午前中の短い間ですが、中心市街地に交通規制がかかります。
出典;https://www.daily-tohoku.news
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開催される「一斉摺り」に伴ったものですので、規制の終了時間は場所によって異なります。
上記の時間帯に中心市街地方面へ訪れた場合は、現地の警察官や係員の指示に従うようにして下さい。
まとめ
豊年の予祝に田植踊りをすることは、田に霊力を与え、土を活気だたせる重要な意味がありました。
そんな八戸えんぶりは、まだ寒い北の大地で根付き、およそ800年もの長い間受け継がれてきた民俗芸能です。
早春とは言え、2月の八戸は平均気温マイナス0.5度、最低気温マイナス4度といわれていますので、防寒対策を万全にしてお出かけくださいね。