誰かの家の玄関やリビングなどで、大きな「将棋の駒の置物」を見たことはありませんか?
その木彫りの将棋の駒は、主に「王将」のほかに「馬」の字が反対になったものもありますよね。
馬の反対文字「左馬」とは、一体なんなのでしょうか?
そこで今回は、左馬の意味や由来などについてご紹介していきます。
左馬の読み方や由来とは?
馬の反対文字、左馬。
読み方は「ひだりうま」と読みます。
その発祥は、将棋駒の95%の生産を担う、山形県天童市にあります。
江戸時代末期(1603~1868年)、武士階級といえど生活が苦しかったため、内職として将棋の駒を作り始めたことに由来しています。
これが今に伝わる天童の将棋駒の振興のきっかけとなりましたが、その中で、馬を反対にした「左馬」などの飾り駒も生まれたといわれています。
このように今も左馬は、山形県天童市のみ作られている飾り駒です。
材質は主に木だけど、 石や水晶で作られたものもあるし、大きい置き物から小さなストラップまで、さまざまあるよ!
飾り駒「左馬」の意味とは?
「左駒って何のためにあるの?」「あれがあるからって、何なの?」と思われる方もいるかと思います。
それはずばり「縁起がいい駒」だからです。
縁起物である理由は諸説ありますので、それぞれ解説いたします。
①「舞い」を連想させるから
馬を逆さに読むと、「まう」になります。
その「まう」は「舞う」のように、おめでたい席で催される舞いを連想させることから、縁起の良い招福の駒の意味があると言われています。
そのため天童市では、引っ越し祝いや開店祝い、新築祝いなどで、福を招く縁起物として贈られ、よく玄関に飾られています。
②財布のきんちゃくの形に似ているから
江戸時代には、小判や藩札などの紙幣を入れるために「きんちゃく袋」が使われていました。今で言う財布ですね。
馬の字の下の部分が、そのきんちゃくの形に似ているため、きんちゃくの口がよく締まってお金が逃げない、という意味があるそうです。
左馬は富のシンボルともいわれています。
③馬が人を引く(招く)意味から
普通は人が馬を引くものですが、逆さになっているので「馬が人を引いてくる(招き入れる)」という意味となり、先客万来・商売繁盛につながるとされています。
④馬は左から乗ることから
普通は馬は左側から乗るもので、右側から乗ると左腰に差した刀が当たってしまってうまく乗れないのだそうです。
そのようなことから、古来から左馬を持つ人は乗馬が上手くいくと言われていました。
また乗馬だけでなく、長い人生をつまづくことなく過ごすことができる、とも言われ、縁起物の贈り物として使われています。
⑤「右に出るものがいない」という意味から
古来から馬はとても縁起が良い動物としてよく知られています。
また「左馬に勝るものなし」といわれていることから、縁起物とされる馬のデザインは「左向き」になっているものが多いようです。
したがって、左馬には「右に出るものがいない」という意味があり、勝負運を上げると言われています。
将棋の駒の置物「飾り駒」の種類や意味とは?
大きな将棋駒の置き物は、「飾り駒」と呼んだり、「置き駒」と呼ばれています。
彫られている文字は主に「王将」と「左馬」ですが、「夫婦駒」なんて飾り駒もあります。
この項では、飾り駒「王将」と「夫婦駒」、それぞれの意味をご紹介します。
飾り駒「王将」
出典;http://bussan-tendo.gr.jp
左馬のほかにも、むしろ「王将」の飾り駒をよく見かけませんか?
ドラマ「ボク、運命の人です。」の作中でも、亀梨和也さんが、大きな王将の飾り駒をひたすら彫っているシーンがありました。
「王将」は、たくさんの将棋の駒の中でも、最も強い駒です。
その威厳や風格にあやかって、出世や成功につながる縁起を担いで、開業祝い、退職祝い、出産のお祝いなどでよく贈られています。
会社なら社長、家庭なら家長へと、頂点に立ち力強く崇高な「王将」を贈答品として使われているのです。
飾り駒「夫婦駒」
出典;https://www.miwagobanten.com
結婚祝いや結婚記念日に、今でも贈られている夫婦駒。
黒い左馬が男性、赤い通常の馬が女性を表しています。
女性の方がなぜ普通の「馬」なのかというと、男性に寄り添って向かい合っている姿を現しているからだそうです。なんとも素敵ですね。
その意味を知ると、仲の良い夫婦が連想できますね。
夫婦円満、子孫繁栄の願いが込められています。
おわりに
「左馬」は福を招く守り駒とされていますが、山形県天童市に行くと「左馬」は飾り駒だけでなく、ストラップやキーホルダーでも手に入れることができます。
希望すれば裏に自分の名前も彫ってもらえますので、足を運んでみてはいかがでしょうか?
世界に一つだけの左駒ですから、お守りのように愛着が湧いてくるような気がしますよね。