横綱審議委員会っていったい何? 仕組み・役割・裏側までやさしく解説

横綱審議委員会って、ニュースではよく聞くのに「結局なにをしている組織なの?」と感じている人も多いのではないでしょうか。

今回では、横綱審議委員会の基本から、メンバー構成・権限・賛否のポイントまで、相撲ファン目線でわかりやすく深掘りしていきます!

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横綱審議委員会とは?ざっくり一言でいうと

横綱審議委員会
出典;https://japaneseclass.jp

横綱審議委員会(略称:横審よこしん)は、日本相撲協会の外に置かれた「横綱専用のアドバイザー集団」のような機関です。​

日本相撲協会の中ではなく「外側」に置かれているのが、大きな特徴です。

日本相撲協会の理事長から意見や相談を受けて、横綱に関する重要な案件について「こうすべきです」と答申したり、逆に横綱審議委員会側から「こうしたほうがいい」と進言したりします。

なぜわざわざ横審があるの?

他の力士の昇進は「日本相撲協会の審判部」が審議するのに、なぜ横綱だけは「外部の横綱審議委員会」が審議するのでしょう?

その理由は2つあります。

  • 横綱は「番付の頂点」で、降格がない特別な地位だから
  • 協会の内輪だけで判断すると、甘さや忖度が疑われやすいから

横審が設けられたのは1950年ごろ。

当時、3人の横綱が途中休場を繰り返して世間から批判が高まり、「横綱はもっと厳しく見られるべきだ」という声が強まりました。

そうした背景から、協会内部の判断に対する「甘さ」や「忖度」を避けるために、相撲ファンでもある各界の有識者が、横綱の評価や推薦を外部の立場から行う仕組みとして横審が誕生したのです。

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横綱審議委員会のメンバーはどんな人たち?

横綱審議委員会の会議
出典;https://www.sponichi.co.jp

横綱審議委員会のメンバーは、政治、経済、文化、報道など、さまざまな分野の有識者から選ばれます。

共通しているのは「相撲への理解が深く、相撲を愛していること」であり、協会の内部者は入らないルールになっています。

項目内容の目安
人数最大15名程度
出身分野政治家・企業経営者・大学教授・作家など
条件相撲に詳しい、有識者、協会外部の人物
任期1期2年・更新あり(上限あり)

委員は再任を含めて最長で5期、つまり10年まで務めることができます。

報酬はないので、本当に相撲が好きな人たちが「大相撲をもっと良くしたい」という思いのなか、純粋な情熱で活動しています。

なぜ外部有識者なの?

横綱は国技の象徴であり、相撲協会の都合だけで決めてしまうと、世間の感覚とのズレが生まれやすくなります。​

そこで相撲協会外の人間が集まり、「相撲界」「ファン」「社会全体」の視点から横綱の価値を担保する――横綱審議委員会は、いわば横綱という制度の守り人として存在しているのが面白いところです。

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横綱審議委員会は何をしているの?“主な仕事”3つ

相撲の両国国技館

①横綱への推薦

横綱審議委員会の「いちばんの仕事」は、横綱への推薦です。​

相撲協会の審判部が「この力士を横綱にしたい」と判断すると、理事長が横綱審議委員会に意見を求めます。

横綱審議委員会はその力士が「横綱にふさわしいかどうか」を審議し、答申として判断を示します。

出席委員の3分の2以上が賛成した場合、「横綱に推薦する」という答申が出されます。

理事会はその答申を“尊重”して正式決定を行うため、横綱審議委員会は実質的に横綱誕生の最終ゲートになっています。

昇進審議の舞台裏

照ノ富士の2021年横綱昇進では、「怪我明けの2連続優勝」をどう見るかで委員の間で議論が分かれました。
それでも最終的には「横綱の器」と満場一致で推薦。基準の目安は「大関で2場所連続優勝」です。

一方、稀勢の里の場合は「1場所優勝+準ずる成績+品位」で昇進が認められました。

こうした柔軟さから、委員一人ひとりの「相撲哲学」が判断に色濃く反映されるのです。

②品格の審査

内規では、

  1. 横綱に推薦する力士は品格・力量ともに抜群であること
  2. 大関で2場所連続優勝を原則とする

と定められています。

ただし、これはあくまで目安であり、最終的な判断は委員たちの総合的な審議によって決まります。

評価の対象は優勝回数や勝率だけではありません。

取組の態度、ファンへの向き合い方、言動、ケガへの姿勢など——力士が横綱としてふさわしいかを、多面的に議論して決めるのです

③横綱になってからも見守る

横綱審議委員会の役割は「昇進させる時」だけではありません。

現役横綱の言動や姿勢にも目を向け、その振る舞いを見守ることも大切な使命です。

成績不振や不祥事が続く場合には、「注意」、「激励」、「引退勧告」といった形でメッセージを出すことがあります。

特に「引退勧告」は極めて重い判断であり、「横綱としての責任を果たしていない」という外部からの厳しい指摘を意味しています。

そのため、角界やファンの間に大きな反響を呼ぶことも少なくありません。

横綱審議委員会は、土俵上だけでなく、社会的な視点から横綱の責任と品格を問いかける役割を担っているのです。

引退勧告の衝撃事例

横綱審議委員会の「お叱り機能」で有名なのは、朝青龍(2007年:激励)、把瑠都(2014年:注意)、稀勢の里(2020年:引退勧告)への対応。

稀勢の里の場合、4場所連続不振で「横綱の名に値しない」と異例の勧告が出され、即引退に追い込まれました。

鶴竜や白鵬の長期不振時も「激励」止まりだったのに対し、差別化された判断が「委員の好みか?」とファンの間で今でも議論されています。

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横綱審議委員会はどこまで「権力」があるの?

裁判の小槌

形式上、横綱昇進を最終決定するのは「日本相撲協会の理事会」です。

しかし、横綱審議委員会の「推薦」がない状態で、横綱が誕生することは事実上ないとされています。

昔は「理事会は横審の決議に拘束されない」と規定されていましたが、現在では「横審の決議を尊重する」とされていて、その影響力は絶大なものです。

したがって、理事会が無視すれば世論の猛反発は避けられません。

横審は協会の“ブレーキ役”として社会の目線を反映し、横綱誕生の“最終関門”として機能します。

横綱審議委員会の存在はなぜ賛否が分かれるのか

横綱審議委員会は「外部の良識」として期待される一方で、「本当に必要か」「発言が横綱を縛りすぎ」との批判も根強いです。

不振や引退問題が起きるたび、横綱審議委員会のコメントがニュースを賑わせます。

「横審は口を出しすぎ」「いや、あれくらい厳しくて当然」と世論が真っ二つに分かれるのです。

これは、横綱審議委員会が単なる審議機関じゃなく、“理想の横綱像”をめぐる議論の中心にいるから。

相撲ファンそれぞれの“横綱観”がぶつかり合う、熱い論点なのです。

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おわりに

横綱審議委員会は「横綱とは何か」を問い続ける機関です。

白鵬や朝青龍の時代から、横綱不在の混迷、そして誕生まで、横審は常に土俵の中心に立ち続けています。

2場所連続優勝の目安を超え、品位や努力を総合的に見つめるその姿勢は、相撲の美学そのものと言えますね。

また次回も相撲の奥深さを一緒に深掘りしましょう!

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