富山県の八尾町で開催される「おわら風の盆」。その哀愁漂う美しさから一度は見てみたい風物詩として毎年全国から25万人以上が訪れているお祭りです。今回は、越中八尾「おわら風の盆」と「前夜祭」についても併せてご紹介します。
おわら風の盆とは?
おわら風の盆の会場となる富山県の八尾町は、かつて聞名寺の門前町として栄えたところで、日本の道100選にも選ばれた石垣の諏訪町本通りなど、美しい格子戸や土蔵造りの家が立ち並ぶ、落ち着いた佇まいの町です。
その越中八尾を舞台に、唄、三味線、太鼓、胡弓が奏でる、独特の哀調を帯びた富山県民謡「越中おわら節」に合わせて、編み笠を目深にかぶり浴衣や法被を着た男女が踊ります。
おわらは、踊り、唄、楽器の3つが一体となった伝統芸能で、その民謡とは思えない洗練されたその芸は「芸術民謡」ともいわれています。
風害を鎮め今年の豊作を祈るこの民謡行事には、毎年全国から25万人以上もの見物客が訪れ、八尾の町をそぞろ歩きしながら、おわらの風を感じています。
おわら風の盆の歴史
おわら風の盆がどうして生まれたのでしょうか。
その起源は古文献をひもといてもはっきりしませんが、口伝ではこんな面白い逸話があります。
米屋少兵衛という男が、寛永13年(1613年)に八尾町を開きましたが、その後、この地方に富山藩が新しく藩を設ける時に、八尾町のことが皆目わからないため「八尾開町の文書が欲しい」となり、富山藩では、八尾町民にこの所在を確かめたのですが、少兵衛の子孫は水口村へ既に移転してしまっていて、「文書の入手は困難」とされました。
そこで策を考え、花見にかこつけて、町内の芸人たちと一緒に酒肴を持って、水口村の米屋宅へ押しかけました。
さあ飲めや歌えやのドンチャン騒ぎ。この機に乗じてまんまと文書を失敬したのです。
富山藩ではその功として、3日間無礼講にするから、町内を面白く練りまわってもよいとのお触れを出しました。
そこで町の人達は、昼夜を問わず総出で俗謡、浄瑠璃、にわか、芝居、仮装行列など、それぞれ知恵をしぼり、三味線、太鼓、胡弓を入れて賑やかに鳴らし続け、町内を練ったのが、「おわら」の始まりとされています。
そして八尾町がたびたび台風の被害にあっていたことから、台風が来ない事、豊作を祈願する行事として「風の盆」と名付け、台風の多い9月に行われるようになりました。
2019年 おわら風の盆の日程・開催時間など
今年のおわら風の盆は、9/1(日),9/2(月),9/3(火)の3日間行われます。
行事の簡単な情報をまとめました。
越中八尾おわら風の盆(2019年) | |
日程 | 2019年9月1日(日)~9月3日(火) ※毎年同日 (前夜祭:2019年8月20日(火)~30日(金)) |
開催時間 | 【演舞会】 1日~3日/19:00~20:55 【輪踊り・町流し】 |
開催場所 | 八尾小学校グラウンド、中心部11町内 |
料金 | 無料(おわら演舞場に入場料あり) |
住所 | 富山県富山市八尾町下笹原5320(八尾小学校) |
マップ | |
お問合せ | 076-454-5138 越中八尾観光協会 |
公式HP | http://www.yatsuo.net/kazenobon/ |
駐車場 | あり(収容台数:約1950台/1000円 ) |
時間別混雑状況
混雑時間
おわら風の盆開催中の3日間、最も混雑する時間は19時以降からの夜間です。多くの見物客や団体観光客が集まり、おわらがじゅぶんに見られない場合があります。
町も道幅も決して広くはないため、踊りが始まるとその周辺は身動きもとれないほどの混雑になる場合もあります。
閑散時間
1日、2日の15:00~16:30の昼間の町流しは観光客も少なく、夜ほどではありません。
そして公式行事としては9月3日の23時までですが、その23時以降からは、地元の大勢の方々が繰り出し個人個人が楽しむための「夜流し」が行われます。その頃は観光客の数も少なくなりますので、唄や楽器の響きを堪能するなら3日の23時からの夜流しがおすすめです。
雨天時の場合は?
雨天中止、順延なしです。町流しも雨が降った時点で「中断」となります。
湿気に弱い胡弓や三味線などの楽器を守るためですので、お天気が不安定な場合はお出かけ前にお問い合わせください。
お問合せ先TEL:076-454-5138(越中八尾観光協会)
おわら風の盆イベント情報
おわら風の盆が開催される3日間、幻想的な音と踊りの伝統行事が、各町内と演舞場にて催されます。
おわら風の盆の舞台となる各町内のエリアマップはこちらをご覧下さい。
出典;http://www.yatsuo.netz
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こちらのPDFでもご覧になれます。
その主なスケジュールをご紹介します。
8月20日(火)~30日(金) 前夜祭
おわら風の盆は9月1日~3日の、3日間とご紹介しましたが、その前の10日間を「おわら風の盆前夜祭」と称し、混雑が少ないおわら本来の艶やかな踊りや唄を、じっくりと楽しむことができます。
もともと、各町が本番前の練習目的で始まったものですが、本番当日の混雑があまりにも激しいため、その混雑を飽和させる目的で設けられた10日間です。
現在では「おわら風の盆前夜祭」を「ゆっくりと楽しめる、おわら風の盆」として観光PRされています。
出典;http://www.yatsuo.net
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時間 | イベント | 場所 |
18:30~19:00 | おわら風の盆の紹介映像 上映 | 八尾曳山展示館 (前夜祭ステージ会場) |
19:00~19:30 | おわら踊り方解説 | |
19:30~19:50 | ステージでおわら踊り鑑賞 | |
20:00~22:00 | 町流し・輪踊り | 各町内(上のマップ参照) |
※8月25日(日) 10:00~ 八尾曳山展示館にて「おわらのど自慢コンクール」が催されます。(無料)
【前夜祭ステージの入場料】
1人 1,500円。1日の定員は500名。
・チケットの詳細はこちらのPDFをご参照ください。
・チケットぴあでの購入はこちら(外部リンク)です。
9月1日(日)
時間 | イベント | 場所 |
14:00~16:00 | おわら踊り方教室 | 八尾曳山展示館 (大人500円・小人300円) |
15:00~17:00、19:00~23:00 | 町流し・輪踊り | 各町内(下の表を参照) |
19:00~19:25 | 演舞会「上新町」 | おわら演舞場 (富山市立八尾小学校グラウンド) |
19:30~19:55 | 演舞会「東新町」 | |
20:00~20:25 | 演舞会「西町」 | |
20:30~20:55 | 演舞会「天満町」 |
町流し・輪踊りのエリアスケジュール(おおよその目安)はこちらをご確認ください。
出典;http://www.yatsuo.netz
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9月2日(月)
時間 | イベント | 場所 |
14:00~16:00 | おわら踊り方教室 | 八尾曳山展示館 (大人500円・小人300円) |
15:00~17:00、19:00~23:00 | 町流し・輪踊り | 各町内(下の表を参照) |
19:00~19:25 | 演舞会「下新町」 | おわら演舞場 (富山市立八尾小学校グラウンド) |
19:30~19:55 | 演舞会「東町」 | |
20:00~20:25 | 演舞会「西新町」 | |
20:30~20:55 | 演舞会「諏訪町」 |
町流し・輪踊りのエリアスケジュール(おおよその目安)はこちらをご確認ください。
出典;http://www.yatsuo.netz
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9月3日(火)
時間 | イベント | 場所 |
14:00~16:00 | おわら踊り方教室 | 八尾曳山展示館 (大人500円・小人300円) |
19:00~23:00 | 町流し・輪踊り | 各町内(下の表を参照) |
19:00~19:25 | 演舞会「八尾高校郷土芸能部」 | おわら演舞場 (富山市立八尾小学校グラウンド) |
19:30~19:55 | 演舞会「福島」 | |
20:00~20:25 | 演舞会「今町」 | |
20:30~20:55 | 演舞会「鏡町」 |
町流し・輪踊りのエリアスケジュール(おおよその目安)はこちらをご確認ください。
出典;http://www.yatsuo.netz
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おわら風の盆 演舞会について
おわら風の盆が開催される3日間の中で、町流しの他に、八尾小学校グラウンドで開催される「おわら演舞場」にて、ステージでの演舞も行われます。
3日間にわたり、全町内11支部が、それぞれの特徴を活かした演技を披露してくれますので、町流しを探し歩くのが大変な場合は、こちらのステージで演舞を鑑賞することをおすすめします。
【日時】9月1日~3日 19:00~20:55
【会場】富山市立八尾小学校グラウンド
【入場料】指定席 3,600円・自由席 2,100円
・チケットの詳細はこちらのPDFをご参照ください。
・チケットぴあでの購入はこちら(外部リンク)です。
おわら風の盆の「人気スポット」はここ
格子戸の宿、土蔵、造り酒屋などに明かりが灯る頃、街道から、路地裏から、坂道の上から下から、踊りの流れが出てきます。
そこで、おわら風の盆に訪れたら、一度は観てみたい素晴らしいロケーションがありますのでご紹介します。
おたや階段
そこは「鏡町」にある、おたや階段です。ここでの舞台踊りや輪踊りは有名です。
鏡町支部は、11団体ある支部の中でも、独特の雰囲気を持った踊りをすることで人気があります。
ここには遊郭があり大勢の芸妓さんがいた花街だったことから、歌舞音曲が盛んだった名残りがあり、艶のある華やかな踊りが継承されています。
この鏡町支部のみが、男女が混合して踊りを表現するのです。
諏訪町本通り
次は、諏訪町本通りです。「日本の道100選」にも選ばれた風情溢れる場所です。
ここは長い一直線のなだらかな坂道の石畳で、白壁に格子戸、蔵造りの家並みに沿って並ぶぼんぼりに淡い灯がともり、日本の昔の面影を残す雰囲気がおわら風の盆とよく融け合い、まさに幻想的です。
よくテレビで放送されたりパンフレットになるのは、この場所が多いですね。
狭い道のため大変混雑しますが、ここも鏡町と同じくらい人気です。
おわら風の盆の見どころは?
おわら風の盆の見どころについてご紹介します。
まずは、富山市が公開しているおわら風の盆の公式動画がありますので、チェックしてみましょう。
お祭りのいのち「輪踊り・町流し」
おわら風の盆の見どころは、なんといっても「輪踊り・町流し」ですね。
古い町並みに哀調を帯びた胡弓や三味線の音色が響くなか、編笠を目深にかぶった男女の優美な舞が町を流し、夢幻の世界へと誘ってくれます。
伸ばす手の甲の反りや強調されるうなじが、いかにも笠の中にある美人を演出し、見る者の想像力を逞しくさせる、そんな妖力もありますね。
ゆっくりしたテンポの中で、手や腰の動きがピタリと伴奏に合い、静かな動きの中に内に秘めた熱いエネルギーを感じることができます。
洗練された「越中おわら節」
地方(じかた)とよばれる囃子方(三味線、太鼓、胡弓)の伴奏に合わせた、「越中おわら節」の哀調をおびた民謡。
その朗々と続く高音の流れは、洗練された民謡の極致を見る思いです。
「越中おわら節」は、長崎の平戸にあった平戸節が、日本海を渡って富山港に着き、神通川をさかのぼってこの八尾町についたものと言われています。
当時は老若男女問わず、誰でも伴奏に合わせて一緒に唄っていました。
ところが、だんだん洗練されて節まわしも難しくなり、名人といわれる人が一人で唄うようになったといいます。
現在では、日本の民謡のなかでも屈指の難曲とされていますが、おそらく昔の唄は、もっと素朴なものだったのではないでしょうか。
現在の「越中おわら節」は、故・川崎順二氏が全国に紹介し、保存に努めたということで有名です。
お祭り終了後も楽しめる「夜流し」
最終日の9月3日。23時を過ぎる頃になると、公式行事の「おわら風の盆」も終わりを告げます。
人々は家路を急ぎ、家々の戸は閉ざされ灯りも消え、お祭りのあまりにも賑やかな空気が、一変して静寂になります。
しかし、このお祭りはこれで終わりを遂げたわけではなく、これからが本当の民謡行事といわれています。
深夜からは、見せるための「おわら風の盆」ではなく、行事の本来の意味、つまり自分たちだけで楽しむための行事を取り戻した時間となっているのです。
「おわら風の盆」で踊れる女性は、正式には25歳までの未婚と決まっていますが、公式行事が終わったあとの深夜の時間は、そのしがらみがなくなり、いわゆるベテランの踊り手も参入しています。
そして最後の開放感から「真の踊りが見られる」とも語られています。
時間でこの行事を区切ることのできない、切々とした八尾町の人々の熱い思いが、こうして「町流し」を自然発生的に生み、300年以上も受け継がれてきたといえます。
「越中八尾駅」では、毎年、始発列車の乗客をおわらで見送る「見送りおわら」が名物となっています。
もしお時間に都合がつくようでしたら、夜通し越中おわら風の盆を楽しんで、始発で帰路につくのも良いですね。
おわら風の盆に行ったら食べてみよう
八尾そば
山のふところにある八尾町は、山菜や川魚も豊富。
素材を生かした自然の味が伝わっており、中でも「そば」は有名です。
曲がりくねった町筋を歩くと、蕎麦屋が多いのに気づくことでしょう。八尾のそばは、地元で育てた良質のそば粉をたっぷり使って、丹念にこね上げた手打ちそばです。
粘りが強く、香りが高く、味が濃厚なのが特徴といいます。
「手打ちにされても 八尾のそばだよ ちょっとやそっとで なかなか切れない」
と、八尾のそばは唄や長囃子に歌われているほど、八尾では昔からそばが親しまれてきました。
ぜひ、八尾そばの自慢の味をお楽しみください。
おわら風の盆のお土産は?
越中和紙
国の伝統工芸品にも指定されている越中和紙。
澄みきった豊かな水に恵まれ、山々には紙の原料こうぞの木も多い八尾では、古くから紙作りが盛んでした。
平安時代に書かれた「延喜式(えんぎしき)」にも、税として納める作物として越中和紙の名が記されている等、極めて古い歴史があります。
前述の歴史でも紹介した米屋少兵衛も、養蚕、薬草とともに、紙作りを産業に選び、その育成に力を入れました。
洋紙の進出で打撃を受けた時代もありましたが、あくまでも手すき一筋。時代は変わっても、頑固に素朴な和紙の伝統を守り抜いています。
国内外からの人気も高い越中和紙。その魅力はぜひ手に取って感じてみて下さい。
贈り物にもきっと喜ばれるはずです。
アクセス・駐車場について
おわら風の盆へのアクセス方法をご紹介します。
電車の場合
JR越中八尾駅で下車。徒歩30分で「おわら演舞場」の八尾小学校です。
日中のわずかな時間だけですが、駅から会場中心部の「曳山展示館」まで行ける「まちなか連絡バス」が運行しています。
徒歩ですと坂道があり少し大変に感じるかもしれませんが、この間には屋台や演舞が見られる各町内もありますので、巡りながら歩く楽しみがあります。
当日は歩きやすい靴で訪れることをおすすめします。
車の場合
・北陸道富山ICより、国道41号経由で12km(約25分)
・北陸道富山西ICより、国道372号経由で12km(約25分)
おわら風の盆では、非常に広範囲で交通規制がかかり、また道幅も狭いことから毎年大変混雑します。特別な理由がない限り、公共交通機関を利用することをおすすめします。
臨時駐車場について
「前夜祭」の10日間は、臨時駐車場を1ヶ所、
「おわら風の盆」の3日間は、臨時駐車場を2ヶ所、用意してくれていますのでご紹介します。
八尾町民ひろば | |
利用日 | 「前夜祭」8月20日~30日 |
会場まで | 曳山展示館まで徒歩 約14分(約900m) |
住所 | 富山県富山市八尾町福島126-6 |
マップ | |
収容台数 | 1700台 |
料金 | 普通車1000円 |
富山市八尾スポーツアリーナ駐車場 ※シャトルバスあり | |
利用日 | 「おわら風の盆」9月1日~3日 |
会場まで | 徒歩 約43分(約3.3km) |
住所 | 富山県富山市八尾町井田101 |
マップ | |
収容台数 | 1700台 |
料金 | 普通車1000円 |
八尾ゆめの森テニスコート駐車場 ※シャトルバスあり | |
利用日 | 「おわら風の盆」9月1日~3日 |
会場まで | 徒歩 約23分(約1.9km) |
住所 | |
マップ | |
収容台数 | 250台 |
料金 | 普通車1000円 |
シャトルバスに乗り換えよう!
2ヶ所の臨時駐車場⇔「おわら演舞場」付近まで、シャトルバス(1人500円)が随時運行しています。
運行日 | 行き | 帰り |
9月1日(日)、2日(月) | 15:00~21:00 | ~23:00まで |
9月3日(火) | 17:00~21:00 | ~23:00まで |
23:00を過ぎると歩いて駐車場に戻らなくてはいけませんので、ご注意ください。
交通規制について
おわら風の盆開催中の3日間は、八尾町全域に交通規制がかかります。
日によって規制のかかる時間と場所が異なるので注意が必要です。
1日・2日が15:00~翌1:00
3日が18:00~翌1:00までとなっています。
また規制終了後も踊りをしている場合がありますので、車両の進入は極力控えるようにしましょう。
2019年の交通規制図はこちらをご覧ください。
出典;www.yatsuo.net/kazenobon/
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こちらのPDFでもご覧いただけます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
胡弓と哀調と歌声が心に響く「おわら風の盆」は、300年ものあいだ人々を魅了し続け、今もなお進化し続けています。
他では体験できない幻想的な時間を、ぜひ楽しんできてくださいね。