春と秋の2回ある「お彼岸」。
家族そろってお墓参りする光景は、風物詩になっていますね。
そしてお彼岸を過ぎると、気候の良い過ごしやすい季節が巡ってきます。
今回は、今年のお彼岸の日程、期間、その由来、お墓参りの仕方なども詳しくご紹介します。
お彼岸とは
お彼岸は、ご先祖様を感謝する期間のことをいいます。
この期間は、お彼岸では家族そろってお墓参りをしたり、仏壇を掃除をしたりすることで、ご先祖様に感謝する習慣があります。
そしてご先祖様の冥福を祈るとともに、一人ひとりがご先祖様から与えられた命であることを実感し、家族の幸せを祈るという意味も込められています。
私たちが元気で生きていることは、遠いご先祖様のおかげです
なぜお彼岸にお墓参りするの?
お彼岸とは、仏教の言葉で「仏の住む世界」のことをいいます。
仏教では、極楽浄土は西にあると考えられており、
太陽が真西に沈む「春分の日」と「秋分の日」前後は、ご先祖様の住む極楽と、私たちの住む現世が交流しやすいとされているのです。
そのため、お彼岸の中日(春分・秋分の日)前後の日は、ご先祖様を敬うためお墓参りに行く人が多いのです。
暑さ寒さも彼岸まで
「暑さ寒さも彼岸まで」というように、春のお彼岸から気候は暖かくなり、秋のお彼岸から徐々に夏の日差しが弱くなり、過ごしやすくなっていきます。
そんな年に2回あるお彼岸は、1年の中でも季節が穏やかな時期ということです。
これまであまりお彼岸に参加したことがなかった方も、今年は家族でお墓参りに行き、自然の美しさと恵みを堪能してみてはいかがでしょうか。
お彼岸の由来
春と秋にある「お彼岸」ですが、どのような由来があるのでしょうか。
その歴史を辿ってみましょう。
仏教のお彼岸の語源
お彼岸という言葉は、仏教用語です。
「彼岸」とは「向こう岸」。
これに対して、「こちら側」は「此岸」といいます。
向こう岸(彼岸)とは、ご先祖様の住む、極楽浄土の世界。
こちら側(此岸)とは、私たちの住む、生老病死の死苦がある現世の世界です。
彼岸の語源は、梵語の「波羅蜜多」という言葉で、これには
煩悩のある現世を離れて、仏教的理想の境地である涅槃の世界に行く
という意味があります。
もっとわかりやすく言うと、
この世の煩悩(本能的な欲)や迷いを捨て、自分自身を見つめながらよい行いをして、美しい極楽浄土の世界に行く
という意味です。
人は誰でもみな、極楽往生したい・・・そんな願いがあると思います。
そんな「波羅蜜多」の説教をする僧が村々をまわったのは、年に2回。
春の種まきの時期(春分の頃)、秋の刈り入れの時期(秋分の頃)という、農民が田畑で働いている時期でした。
その説教僧が来ることを、隠喩的に「そろそろ”彼岸”が来るぞ」と農民間で言い習わしていたことから、彼岸という言葉ができたといわれています。
西方浄土の思い
ではなぜ説教僧は、春分の頃と、秋分の頃に、村にやってきたのでしょうか?
彼岸の中日、つまり「春分の日」「秋分の日」には、太陽が真西に沈むことから、仏教では西に極楽浄土があるとされていたため、最も適している日とされていたからです。
よって、この日に彼岸に行ったご先祖様を供養するようになったともいわれ、またその日に自分も彼岸に行けるようにと祈るという意味合いがあったといわれています。
彼岸に達したであろうご先祖様の霊をなぐさめ、そして自分もまた仏道修行によって彼岸に至ることを願って、彼岸という行事が日本で生まれたのです。
そんなお彼岸の思想は、仏教思想に由来するものですが、仏教の本家・インド仏教にはなく、実は日本固有のものです。
確かに考えてみれば、暑いインドには日本のような四季がないですから、彼岸という俗習も生まれなかったのかもしれませんね。
お彼岸のはじまり
お彼岸の法要は、平安時代の前期に、桓武天皇が執り行ったのが始まりといわれています。
お彼岸の法要のことを「彼岸会」といいますが、それは『源氏物語』にも見えることから、かなり古くから行われていたのがわかります。
その当時はお彼岸は11日間も行われていたそうです。
今のように7日間となったのは江戸時代になってからで、明治時代の改暦で太陽暦になってもこの形式が引き継がれ、現在に至っています。
なぜお彼岸は7日間あるの?
ではなぜ、お彼岸が7日間あるのでしょうか?
前述の「波羅蜜多」に至るには、以下の6つの徳目を修行しなくてはなりませんでした。
これを、お彼岸の中日をはさんで1日に1つずつ修行をし実践して、涅槃の境地に達するということで、お彼岸は7日間あるわけです。
ですのでお彼岸というと、お墓参りをしてご先祖様を供養するのではなく、仏の世界に行くための修行だったということです。
皇霊祭が「春分・秋分の日」になるまで
それから時代が下り、1878年(明治11年)6月5日春分の日は「春季皇霊祭」、秋分の日は「秋季皇霊祭」となりました。
これは、天皇が皇霊殿で、歴代の天皇の御霊を親しくまつられる祭儀が執り行われるという、国家の祭日となったのです。
この皇霊祭は昭和まで引き継がれましたが、1948年(昭和23年)7月20日、国民の祝日に関する法律によって、
となり、国民の休日となりました。
このようにお彼岸の歴史を辿ってみると、単にご先祖様を供養するだけの日ではなかったことがわかりますね。
ご先祖様から受け継いだ遺産に感謝して霊をなぐさめ、極楽浄土を願う気持ちの表れとして設定されたのが、春分・秋分の日ということです。
2022年のお彼岸はいつからいつまで?
お彼岸は、春と秋の2回あります。
- 3月下旬(春分の日をはさんで1週間)
- 9月下旬(秋分の日をはさんで1週間)
2022年の日程は以下の通りです。
「春」のお彼岸の期間
2022年3月18日(金)~3月24日(木) の7日間です。
関東方面では間もなく桜の開花が予想される頃ではないでしょうか。
初日を「彼岸入り」、最終日を「彼岸明け」といいます。
「秋」のお彼岸の期間
2022年9月20日(火)~9月26日(月) の7日間です。
夏の暑さがひと段落する頃ですね。
初日を「彼岸入り」、最終日を「彼岸明け」といいます。
お彼岸は毎年日にちが違う
毎年あるお彼岸ですが、なかなか覚えられないという人も多いと思います。
なぜなら、毎年日にちが変わるからです。
お彼岸の中日である「春分の日」と「秋分の日」は、昼夜の長さが同じ日として定められている、立派な天文学的な意味のある日です。
ですので、「春分の日」と「秋分の日」は、国立天文台が作成する「暦象年表」に基いて閣議によって決められ、毎年2月1日付で翌年の該当日が発表されます。
その結果、私たちは数年先の日程をあらかじめ把握することができないため、毎年カレンダーで「春分の日」と「秋分の日」を確認しなくてはいけませんね。
お彼岸は、「春分の日」と「秋分の日」前後3日を合わせた7日間と覚えておきましょう。
お彼岸でのお墓参りのしかた
お彼岸の日程がわかったところで、お彼岸でのお墓参りの仕方についてご紹介していきます。
お墓参りはいつ行くの?
お墓参りは、お彼岸の期間中であれば、いつ行っても構いません。
期間中の都合の良い日を選んで、お参りをすると良いでしょう。
よくお彼岸のお墓参りに選ばれる日としては、中日(春分・秋分の日)の午前中に行くのが多いようです。
中日は祝日ですので、仕事や学校がお休みで家族が集まりやすいことが理由に挙げられます。
お墓参りは誰が行くの?
家族の他に、故人と縁のあった人も、それぞれお参りします。
お墓参りの服装は?
服装は基本的に、何を着ても構いません。
しかしあまり派手な色や奇抜なファッションは避け、場所柄を考えて地味目な身支度で行きましょう。
お墓参りの持ち物は?
※寺院や霊園の場合、大抵ひしゃくや手桶などは備えてありますが、集落などの共同墓地などでは用意されてない場合が多いですので、お出かけ前にご確認下さい。
お墓参りの作法
実はお墓参りには特別な作法がありません。
そこでここでは、概ね行われている一般的な手順をご紹介します。
お彼岸だけでなく、お盆、故人の命日、年忌法要などの法事でもやり方は同じですので、この機会にチェックしておきましょう。
全員の合掌が済んだら、お墓参りの手順としては一通り終了です。
お花、食べ物のお供え物は、カラスなどに食い散らかされないよう、お参り後は必ず持ち帰ります。
お供えするお花の種類
お彼岸でお墓参りに行く際に、忘れてはいけないのがお供えのお花です。
お仏壇やお墓に供えるお花というと、菊をイメージする方が多いかと思いのではないでしょうか?
しかしお彼岸にお供えするお花は、菊にこだわる必要はありません。
故人が好きだった花や、その季節に合った花を選びましょう。
お供えに適しているお花の色味は、白や、淡い色の花が一般的です。
花束にするなら、白を基調に、ピンクやブルーなど優しい色合いで合わせることが多いです。
お彼岸が近くなると、お花屋さんやスーパーなどの店頭に供花が並び始めますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
お花を贈る際の注意点
お彼岸のお花を贈る場合は、お花は「彼岸入り」の午前中までに贈るのがよいでしょう。
2022年の彼岸入りは、以下の日程です。
通販での注文も可能ですので、思い立ったら早めのご準備をおすすめします。
お花のプロの目利きによる様々なお供えのお花が用意されていますので、あなたの心遣いがきっと伝わることでしょう。1度チェックしてみてくださいね。
お彼岸のお供え物定番は?
お彼岸の期間には、基本的に、お墓や仏壇を綺麗にしてお供えをします。
お彼岸のお供えで有名なものは、春のお彼岸は「ぼたもち」、秋のお彼岸では「おはぎ」が一般的ですね!
呼び名が違うだけで、明確な違いはなく、どちらも同じ食べ物です。
ただし、地域やお店、風習によって違いがあるようで、まわりにこし餡がついているものを「ぼたもち」と言い、まわりに粒餡やきな粉がついているものを「おはぎ」と呼ぶところもあるそうです。
ただ名前をそれぞれを漢字で表記すると、春に咲く牡丹にちなんで牡丹餅、秋に咲く萩にちなんでお萩と書きます。
それぞれの季節の花から名付け、呼び名を替えて食べるのも風流で素敵ですね。
「ぼたもち」や「おはぎ」いつ食べるの?
お彼岸期間は7日間ありますが、いつ食べたらいいのでしょう?
毎日食べるの?と思う人もいると思いますが、1日だけで大丈夫です。
大切なのは「感謝の心」ですので、あまり日にちに神経質にならずに、心を込めておはぎを準備して、みんなで笑顔で語らいながら頂きましょう。
おわりに
お彼岸の由来や歴史、お彼岸の意味や過ごし方まで、一連の流れをご紹介しました。
ご先祖様を敬い、故人に思いを馳せる。それは宗教上の法要にとどまらず、いつの間にか、日本人の心の中に住み着いてはぐくんできた習俗であることが分かりました。
暑さ寒さも和らぎ、日中も過ごしやすくなる季節になります。
そんな季節の移ろいを感じながら、ご先祖様に自分のこれからを思い伝えることができれば、それはきっと有意義なものになるはずです。
これからのお彼岸では、改めてご先祖様のご恩に感謝し、偲ぶ日としたいものです。