東大寺で行われるお水取り(修二会)は、奈良時代から1260年以上もの間一度も途絶えることなく続けられている法会です。今回は、奈良に春を呼ぶ一大イベント「東大寺のお水取り」についてご紹介します。
東大寺のお水取りとは?
奈良に春を呼ぶ、東大寺二月堂のお水取り。正式には『修二会』といいます。
修二会とは、修二月会のことで、仏の供養をする法要のことです。
もとは陰暦2月に行われる法会だったので、修二会と呼ばれるようになりました。
東大寺二月堂の本尊は、絶対の秘仏とされる「十一面観音」です。
その観音菩薩の前で、東大寺の僧侶が悔過(自己の罪・過ちを悔い改める)を行い、国家の安泰と人々の幸せを祈願するものです。
修二会は、長谷寺、新薬師堂、法隆寺でも行われていますが、何といっても盛大なのは、この東大寺の修二会です!
代表的な行の一部の名をとって、通称「お水取り」と呼ばれ、その名が広く知られています。
水と火の荘厳なる祭典は、奈良の一大イベントとなっています。
東大寺のお水取りの歴史
天平勝宝4年(752年)、東大寺の僧侶・十中和尚が、笠置山の龍穴という奥深い洞窟で菩薩たちの行法を見て、修二会を創始したと伝えられています。
その道場として建立したのが二月堂です。
二月堂は江戸時代に再建されるまで焼失していた時期もありましたが、お水取りの行事だけは、一度も途絶えたことがないそうです。
お水取りは、1260年も続く奈良最古の伝統行事です。
2025年 東大寺のお水取りの日程・開催時間など
東大寺のお水取りは、
3/1(日)~3/14(土)の14日間行われます。
行事の簡単な情報をまとめました。
名称 | 東大寺二月堂修二会(お水取り) |
日程 | 2025年3月1日(土)~14日(金) ※毎年同日 |
開催時間 | 【お松明】 3月1日(土)~11日(火)、13日(木)/19:00~ 3月12日(水)(籠松明)/19:30~ 3月14日(金)/18:30~ 【お水取り】 3月13日(木)/1:30~ |
開催場所 | 東大寺二月堂 |
料金 | 入場無料 |
住所 | 奈良県奈良市雑司町 雑司町406-1 二月堂 |
お問合せ | 0742-22-5511(東大寺) |
公式HP | 東大寺公式HP |
公式 | X・Instagram・YouTube |
駐車場 | なし(近隣駐車場を利用) |
▼会場の地図はこちら
日別混雑状況
混雑日
例年も混雑する日は、他の日よりサイズの大きい籠松明が上げられる12日です。
19:30から始まりますが、1時間以上前から多くの人が押し寄せ、大変混み合います。18:00前後には、誘導路が「大鐘」の広場まで満員になります。広場は本来3~4000人しか入れないため入場制限がかかり、せっかく行っても広場に入られない状態になります。余裕を持って2時間前には到着しておくことをおすすめします。
3月12日以外でも、土日は非常に混雑します。
閑散日
お松明をゆっくり鑑賞したい場合は、11日までの平日がおすすめです。平日のお松明もじゅぶん見応えがあります。11日までは19:00からお松明が始まりますが、それでも1時間前までには到着しておきましょう。
雨天時の場合は?
雨天決行です。お天気によっては雨具を持って行きましょう!
東大寺のお水取りの行事日程
2週間にわたって繰り広げられる東大寺二月堂の『修二会』(お水取り)では、以下の様々な行法が行われます。
日程 | 主な行法 |
---|---|
3月5日、12日 | 神名帳・過去帳の朗読 |
3月5日、7日、12日、14日 | 数取り懺悔(三千編礼拝) |
3月5日~7日、12日~14日 | 走りの行法 |
3月12日~14日 | 達陀の妙法 |
3月13日 | お水取り |
3月1日~14日(毎日) | お松明 |
この中でも特に有名なのが「お水取り」と「お松明」です。
そのため、修二会は通称、お水取りと呼ばれています。
その「お水取り」と「お松明」の日程の詳細は以下のとおりです。
火の儀式「お松明」の日程
3月1日~14日まで毎日、雨の日でも毎日10本の松明が焚かれる「お松明」。
二月堂の舞台に1本ずつ上がっていきます。
お松明の火の粉を浴びると「無病息災」など厄災除けになるといわれてます。
お松明は毎日行われますが、所要時間は日によって違います。
日程 | 時間 | 本数 | 所要時間 |
---|---|---|---|
通常(3月12日・14日以外) | 19:00~ | 10本 | 約20分間 |
3月12日 | 19:30〜 | 11本 | 約45分間 |
3月14日 | 18:30~ | 10本 | 約10分間 |
12日のお松明は、翌未明に行われる「お水取り」に向け、松明は11本で行われ、さらに他の日よりサイズの大きいを「籠松明」使用するため、通常より長くなります。この日は最も混雑し、入場規制もあります。
14日は最終日なので、10本の松明が横並びとなり、お松明が連続して上がっていくのが特徴です。なので10分程で終了します。
水の儀式「お水取り」の日程
修二会行われる14日間の中で、お水取りが行われるのは1度のみです。
毎年3月13日、午前1時過ぎに行われます。
お水取りとは、観音さまにお供えする一年分の「お香水」を、若狭井という井戸から汲み上げる儀式です。
汲み上げたお香水はいったん堂内に入れられたのち、3月18日の法要で、参拝者にも分け与えられます。
東大寺のお水取りの見どころは?
数多くの行事の中で広く大衆に知られているのは、やはり「籠松明」と「お水取り」です。
これを見る目的で、深夜ながらも毎年2~3万人もの参拝者が来場します。
この項では、そんな東大寺のお水取りの見どころについてご紹介します!
12日のお松明「籠松明」
火の行事のクライマックスは3月12日です。
期間中は、毎日連行衆が上堂するときにお松明が10本焚かれますが、この日は特別大きなサイズに作られた『籠松明』11本を使用します。
長さ8メートル、直径7メートル、重さ70キロもの大松明が登場し、炎々と燃え上がる松明を東大寺二月堂の回廊舞台から力任せに振り回します!
詰めかけた観衆の頭上には、滝のように流れ落ちる火の粉。
人々は無病息災を願い、我も我もと競うように浴びます。
燃えカスをお守りとして持ち帰る人もいるようですね。たくさんの人が燃えカスを探している様子も見ることができます
12日の籠松明は、お祭りを象徴する壮観なハイライトシーンです。
神秘的な「お水取り」
豪快な火のお祭りのあと、午前1時過ぎ、水のお祭り『お水取り』が始まります。
咒師を先頭とする連行衆の中の7人が、本尊の観音さまにお供えする一年分の「お香水」を、奏楽にあわせて二月堂下の若狭井という井戸へ汲み上げに行くというものです。
大松明とはまた趣を異にして、壮厳かつ神秘的な光景です。
これは天平の昔、「若狭の遠敷明神の神通力によって霊水がわいた」という言い伝えに由来する儀式です。
お水取りの井戸は、閼伽井屋という建物の中にあるため、当役の人以外は、誰も入ることも見ることもできません。
この行列は、井戸と二月堂を3往復します。
汲み上げたお香水はいったん堂内に入れられたのち、3月18日の法要で、参拝者にも分け与えられます。興味のある方は足を運んでみてくださいね。
このお水取りが終わると春がやってくるといわれ、奈良では大変親しまれている行法です。
達陀(だったん)の妙法
お水取りに続いて、達陀の妙法があります。
これは大松明を持った連行衆が堂内を駆け回る火の行法で、火による浄化を行うものです。
3月12日~14日まで3回行われます。
達陀で使用されたダッタン帽は、幼児にかぶせると健やかに育つといわれ、15日の二月堂は、多くの親子連れで賑わいます。
12日「籠松明」を確実に見るには?
当日迷わず籠松明を見るために、まずは見学する場所を把握しましょう!
見学する場所
籠松明を見る場所には2つあります。
①二月堂前の広場
3000〜4000人が立ち見できます。二月堂前の広場は、籠松明を近い場所で見られます。
松明の所要時間は約45分間ありますが、この間に交代で観覧することになります。
そのため、実際に最前列で観覧できる時間は、わずか5分ほどになります。
12日は来場者が多いので、混雑によるトラブルを回避するために、二月堂まで行きつくための順路が決められています。
その順路というのは、下の地図を参考にして下さい。

「大鐘」の広場から、誘導路へ入ります。
大仏殿の入口前付近から案内板が立っていますので、その案内板に従って進むと良いでょう。
籠松明の開始は19:30ですが、毎年18:00頃には誘導路まで満員になるようです。
遅くても16:00〜17:00前までには誘導路に並びましょう。
奈良の3月の気温はまだまだ寒く、夜になると気温が5度以下となります。
長時間の待ち時間となりますので、必ず暖かい服装や飲み物を用意してお出かけして下さい。
②第二拝観席
200mほど離れていて立ち見です。この第2拝観席は、広場に入りきれなかった方達が誘導される場所でもあります。
200mも距離があるため、ここからお松明を見るためには双眼鏡が必要になります。
なお、唯一カメラの三脚が許された場所でもありますので、撮影メインで訪れる方は迷わずこちらの第2拝観席へ行きましょう。
第2拝観席の場所へは、二階堂裏参道を進んでいきます。
位置は、大仏殿の裏側、北東の方角になります。
東大寺のお水取りのお土産といえば
お水取りの椿菓子
東大寺二月堂のお水取りでは、僧侶たちが修行の一貫として紙で椿の花を作ります。
二月堂近くの開山堂にある古木の椿を模したものだそうで、その椿は、良弁椿と名付けられています。
東大寺のお水取りの時期になると、奈良市内の和菓子屋さんでは、この椿を更に模したお菓子が作られます。
お店によってそれぞれ製法が異なり、商品名も店ごとに、それぞれお水取りにちなんだ名前が付けられています。
目に鮮やかな春を呼ぶ銘菓として親しまれているお水取りの椿菓子。
もしお時間があれば、奈良の和菓子屋さんを覗いてみて下さいね。
アクセス・駐車場について
東大寺へのアクセス方法についてご紹介します。
電車の場合
- JR大和路線・近鉄奈良線「奈良駅」下車→
東口2番のりば–市内循環バス外回り「大仏殿春日大社前」下車、徒歩5分 - 近鉄「奈良駅」下車後、徒歩約20分
車の場合
- 名神高速道「京都南IC」より60分
- 京奈和自動車道「木津IC」より7km
- 第2阪奈有料道路「宝来IC」より8km
- 西名阪自動車道「天理IC」より10km
会場である東大寺には、専用駐車場がありません。
お水取りが行われる3月12日は、交通規制もかかり、道路が大変混み合うため、車で参加する方は駐車場を見つからない方も多くいるようです。
また帰りも一斉に同じ時間帯に帰る人が多いため、混雑や渋滞は免れませんので、出来る限り交通機関を利用するのがおすすめです。
それでも車でアクセスしたいという方は、近隣の有料駐車場を利用することになります。
収容台数の多い駐車場5選
東大寺に近く、収容台数の多い有料駐車場を5つ、ピックアップしました。
収容台数の多い順にご紹介します。
いずれも早めの現地入りを目指すことをおすすめします。
①奈良登大路自動車駐車場
②タイムズならまち
③L PARK興福寺前第2
④三井のリパーク今小路
⑤TOMOパーキング奈良大仏殿前
交通規制について
東大寺のお水取りでは、3月12日のみ、東大寺の周辺付近の道路(369号線)・奈良公園周辺を中心に、交通規制がかかります。
規制時間は17:00頃~21:00頃まで。
その時間帯は車での進入が出来なくなりますので、現地の誘導員の指示に従って行動するようにして下さい。
おわりに
粛々と行われる荘厳な水と火の祭典は、ダイナミックで神秘的ですね。
奈良の伝統に思いを馳せながら、春の訪れを感じ取ってみるのもいいですね。
ぜひ当日は防寒対策をして、楽しんで来てくださいね!