寒さが増してくると、天気予報では「冬将軍が到来」という言葉をよく使いますよね。
実は「冬将軍」の語源には、誰もが知る歴史上の人物「ナポレオン」が関係しているのです。
一体なぜなのでしょうか?
そこで今回は、冬将軍の由来や語源、その気になる時期などについても解説いたします。
冬将軍とは?
冬将軍とは、「冬の厳しい寒さ」のことです。
「将軍」をつけることで、人に見立て表現しています。
日本では、シベリア気団や、それが発達した強い寒さが訪れたときに、「冬将軍到来」という言葉が使われることが多いです。
シベリア地方に出現した冬将軍が、ドスンドスンと足音を響かせて日本にやってくる姿が浮かんできますね!
シベリア気団とは?
日本の北西、アジア大陸北部にできる気団です。
冬になると、アジア大陸北部の地面が冷え、日本海側に向かって冷たい風が吹きます。
それが日本海を通るうちに湿り気を帯びていき、日本海側で雪を降らせ、太平洋側では乾いた風が吹きます。
冷たくて乾燥した空気が特徴の気団ですので、日本の冬は湿度が低く、寒いのです。
冬将軍の語源は?将軍とは誰なのか
冬将軍という言葉は、そもそも日本発祥ではありません。
彼の故郷はロシア・シベリア地方、名付け親はイギリス人という、ちょっとワケありな将軍様です。
冬将軍の由来をご紹介します。
冬将軍はイギリスの風刺画家が名付け親
冬将軍が最初に登場したのは、1812年にイギリスの画家が描いた風刺画です。
その絵の中に描かれていたのは、フランスからロシアのモスクワに遠征したナポレオン・ボナパルト(1769~1821年)でした。
出典;https://digitalcollections.lib.washington.edu
頭に氷山をかぶった半人半獣の怪物が、当時ヨーロッパの頂点に君臨したナポレオンをつかまえている様子が描かれていますね!
表題にはこう書いています。「冬将軍がボナパルトちゃんの髭を剃る。」
以後、この名は象徴的なものとなりましたが、一体なぜなのでしょうか?
最強のナポレオンが冬将軍に敗退
1812年、ナポレオンはヨーロッパを征服したあと、ロシアを征服しようと攻め込みましたが、厳しい寒さや積雪のために多くの兵士が命を落とし、撤退を余儀なくされました。
撤退までに2ヶ月間もかかったというその期間は、ロシア軍からの追撃だけでなく、容赦ない極寒と飢えに苦しめられる辛い戦いとなったようです。
最終的に、50万人もの兵士のうち無事に帰還できたのはわずか2万人だったといいます。
冬将軍はロシアの冬
そしてその年、ナポレオンがロシアの厳しい冬に敗れた様子を皮肉った、あの風刺画が出版されました。
そのタイトルには、最強のナポレオンを破ったロシアの寒さを「General Frost(霜将軍)」という言葉を使って表現されており、以後、この言葉は世界でも象徴的なものとなったのです。
General Frostとは、直訳すると霜将軍ですが、日本では「冬将軍」と翻訳しました。
私たちが天気予報で耳にする「冬将軍」の正体は、もともとはフランスの英雄をも恐れさせた、「ロシアの冬」という名の怪物だったということです。
ロシアの友軍!最強の冬将軍
ちなみに、シベリア気団がもたらした寒さは、ナポレオンだけではありません。
ドイツのヒトラーのソ連侵攻(1941~45年)や、スウェーデンのカール12世のロシア遠征(18世紀)をも撃退させたと言われています。
この他にも、ロシアに対する諸外国からの攻撃は、ロシアの冬の厳しい寒さによって何度となく失敗してきた歴史があるようです。
ロシアの厳しい冬は、穏やかな冬しか知らない敵軍に対しての強力な兵器だったようですね!
冬将軍到来の時期はいつ?
冬将軍は、毎年おおむね11月下旬頃~2月上旬頃までの間に到来します。
この期間の中で、1〜2回くらいの頻度で冬将軍がやってくるのです。
この間は、ほぼ全域で一日中氷点下の「真冬日」となり、寒さで路面も凍結したりと危険な状態になります。
また強風や雪によって交通機関に影響が出たり、体調を崩しやすくなりますので注意が必要です。
冬の訪れを告げる「木枯らし1号」が関東で観測されれば、冬将軍が到来する時期になった、ということになりますね。
冬将軍を英語では何ていうの?
冬将軍はイギリス発祥ですが、英語圏でも厳しい寒さを人に見立てたものとして、いくつかの言葉があります。
英語でよく使われるのは、以下の2つです。
寒いときによく使われるフレーズに、
「Jack Frost nipping at your nose.」があります。
直訳すれば ”冬将軍が鼻をつねっている” になりますが、簡単に言うと「鼻がかじかむくらい寒い」と言う意味です。
クリスマスソングの定番の一つで、Nat King Coleによる歌唱で広く知られている名曲「The Christmas Song」の歌詞にも、この「Jack Frost」が使われたフレーズが出てきますよ。
Chestnuts roasting on an open fire
Jack Frost nipping at your nose
Yule-tide carols being sung by a choir
And folks dressed up like Eskimos.
暖炉で焼く栗
鼻がかじかむくらい寒い
クリスマスキャロルが聴こえ
みんなエスキモーみたいに着込んでいる
注意点
- General Winter(冬将軍)
- General Frost(霜将軍)
- General Snow(雪将軍)
これらは、英語では単純にロシアへの軍事的侵攻を阻んだロシアの厳冬を指す言葉になります。
つまり、アメリカでは厳しい寒さの意味では使いませんのでご注意下さいね。
おわりに
私たちが天気予報で耳にする「冬将軍」の正体は、もともとはフランスの英雄をも恐れさせた怪物だったことがわかりました。
多くの命を奪い合う戦争の時代に生まれたことも今では忘れられ、日本では俳句の季語にも使われるようになりましたね。
日本の冬将軍は当時のロシアの寒さほどではありませんが、いつも以上に気を引きしめて、冬将軍を迎え撃つ武装の準備をしておきましょう!