日本三大奇祭のひとつ「吉田の火祭り」をご存知でしょうか。富士山への祈りと感謝の献灯が、去りゆく夏の夜空を燃やします。今回は神秘的な歴史をもつ、吉田の火祭りについてご紹介します。
吉田の火祭りとは?
8月も半ばを過ぎると、富士の北のふもとはもう秋風が立ち始め、登山客であんなに賑わった富士の山も、もうお山じまいの時期になりますね。
山梨県富士吉田市では、富士山への登山道の玄関口にある「北口本宮富士浅間神社(きたぐちほんぐうふじせんげんじんじゃ)」で、お山じまいの神事が行われ、ひときわ賑やかに笛太鼓の音が流れます。
全国に広く知られた「吉田の火祭り」の始まりです。
日本三大奇祭そして日本10大火祭りの一つにも数えられる吉田の火祭りは、
この「富士浅間神社」と、境内社「諏訪神社」の秋祭りです。
夕方になると、ドーン、ドーンという太鼓の音とともに、2基の神輿が浅間神社を出発し、御旅所への到着と同時に、沿道に約80本設置された大松明に火が入れられます。
2kmの沿道に一斉に灯された大松明は、天をも焦がさんばかりの炎の帯を見せ、まるで火の海が山へ登って行くようです。その光景に、ただただ息を飲むばかり。
国の重要無形民俗文化財にも指定されている吉田の火祭りは、毎年県内外から20万人以上もの見物客が訪れ、他では見ることが出来ない神秘的なお祭りに魅了されています。
吉田の火祭りの歴史
日本の三大奇祭といわれる吉田の火祭りとは、どのようにして起こったものなのでしょうか。
それは今から400年以上前にもさかのぼるため、起源をたどると大変古く、それは「起源伝説」として複数の神話が語り継がれていてはっきりとした起源は定かではありません。
これには諸説ありますが、一番多く語られている一説「木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)」のお話を、わかりやすくご紹介します。
木花開耶姫命の伝説
姫は「天孫ニニギノミコト」のお后様で、絶世の美女といわれていました。
あるとき、皇子を妊娠したことを夫の神に告げたところ、疑いの目で見られたことを悲しく思い、
「では出産時にその産屋(うぶや)に火をかけなさい。火傷もなく無事に出産したら潔白、少しでも負傷したら疑われても致し方ない」
と言い、産屋に火がつけられました。
すると少しの火傷もケガもなく、玉のような三人の皇子を出産したのです。
このような故事にちなんで火祭りが行われ、それがゆえに松明(たいまつ)の炭が「安産の護符」となったといわれています。
ミステリアスな多くの伝説
その他にも起源はたくさんの言い伝えがあり、
①仏教の盂蘭盆会(うらぼんえ)の迎え火の名残りである説 ②山岳宗教修験道の行事・護摩焚き(ごまたき)が変わって客寄せに利用されたという説 ③富士山の噴火の恐ろしさにふもとに住む人々が鎮火平穏を祈ったという説 ④浅間神社の地主神の諏訪明神のお祭りだという説 ⑤8月下旬の秋の収穫時、作物に寄ってくる虫除けのお祭りという説 |
などなど・・・その他にもさまざまあります。
「伝説」といいますが、⑤は、はなはだ現実的な説ですね!
しかしいずれにしても、吉田の火祭りはこの土地に生きる人々の間で絶えることなく続いてきたお祭りです。
由来に興味のある方は、下記の公式ホームページにて歴史解説に詳しい内容が掲載されていますので、チェックしてみて下さい。
公式HPはこちらです(外部リンク)
2019年 吉田の火祭りの日程・開催時間など
今年の吉田の火祭りは、8/26(月),8/27(火)の2日間行われます。
お祭りの日程・場所・開催時間などをまとめました。
吉田の火祭り(2019年) | |
日程 | 2019年8月26日(月)・27日(火) ※毎年同日 |
開催時間 | ・26日(月)15:00~22:00 ・27日(日)13:30~20:00 |
開催場所 | 北口本宮冨士浅間神社、上吉田地区 |
料金 | 無料 |
住所 | 富士吉田市上吉田5558(北口本宮冨士浅間神社) |
マップ | |
お問合せ | 0555-21-1000(ふじよしだ観光振興サービス) |
公式HP | http://www.mfi.or.jp/himatsuri/ |
駐車場 | あり(収容台数:26日550台・27日100台/無料 ) |
雨天の場合は?
雨天・荒天決行です。
火を使用するお祭りですが、これまでどんな悪天候の日であっても中止せずに行われてきたお祭りです。
お天気が不安定な場合は雨具を持っていきましょう!
吉田の火祭りのイベントスケジュール
吉田の火祭りは、
1日目を「鎮火祭」、2日目を「すすき祭り」
と呼ばれ、2日間にわたって行われます。
その2日間のイベントのタイムスケジュールをご紹介します。
8月26日(月) 鎮火祭
出典;http://www.mfi.or.jp
画像クリックで拡大します
時間 | 催事名 | 概要 |
15:00 | 本殿祭 | 神輿への動座を願う為の神事。 |
16:00 | 奉遷 | 浅間神社の御神体を、神輿がある諏訪神社に移す「御霊移しの儀式」。 |
16:20 | 諏訪神社祭 | 諏訪神社の祭神に神輿への動座を願う為の神事。 |
16:45 | 発輿祭 | 高天原に神輿を安置し、出発の神事。 |
17:00 | 神輿出発 | 神輿渡御がスタート。 |
18:00 | 神輿休憩 | 上宿交差点で休憩。アゲ太鼓を叩くなどお祭りを盛り上げる。 |
18:30 | 神輿到着 | お旅所到着。 |
〃 | 御旅所着輿祭 | 神輿を安置し、御旅所着輿祭と神輿奉安祭の神事。 |
18:30~21:30 | 太々神楽 | 神の到着を歓迎する「迎え神楽」と呼ばれる太々神楽の奉奏が行われる。 |
18:40~22:00 | 大松明点火 | 大松明に火が灯され、通りにある松明にも順に火を灯していく。富士山の登山道沿いの山小屋でも松明が焚かれる。 |
22:15~23:00 | 消火 | 消防団によって火の後片付けが行われる。完全に火が消えたことを確認後、灰をトラックで運び出す。 |
8月27日(火) すすき祭り
出典;http://www.mfi.or.jp
画像クリックで拡大します
時間 | 催事名 | 概要 |
13:30 | 御旅所発輿祭 | お旅所にて出発の神事。 |
14:00 | 神輿出発 | 神輿渡御がスタート。 |
15:30 | 金鳥居祭 | 金鳥居交差点に2台の神輿を安置して神事が行われる。その後再び渡御が出発。 |
16:00 | すすき玉串 | すすき玉串が販売され、民謡踊りが披露される。 |
19:00 | 太々神楽 | 太々神楽が奉奏が行われる。 |
18:00 | 高天原祭 | 高天原の周囲を2台の神輿とススキ玉串を持った参詣者が7周回る。その後神輿を高天原の中央へ安置し高天原祭が行われる。 |
19:30 | 諏訪神社還幸祭 | 御霊を諏訪神社へ戻し、諏訪神社還幸祭の神事が行われる。 |
20:00 | 浅間神社還幸祭 | 浅間神社での御霊移しが行われる。その後、浅間神社還幸祭がおこなわれ、吉田の火祭りは終了する。 |
吉田の火祭りの見どころは?
吉田の火祭りの見どころについてご紹介します。
まずは吉田の火祭りの動画がありますのでチェックしてみましょう。
空撮による映像で、普通はなかなか見られない光景が見られます。
富士山へ向かう松明の炎と美しい富士山のコントラストは神秘的で、思わず息を飲んでしまいますね。
夜空を焦がす大松明
吉田の火祭りの見どころといえば、やはりなんといっても、夜闇に松明が燃えさかる炎の饗宴ですね!
26日18時半頃、上吉田の国道139号(本町通り)に並べられた大松明は、大提灯を手にした若者たちによって、次々と点火されていきます。
この大松明、高さ3m、直径90cmもあります。
しかも本町通りの大松明と時を同じくして、一般の家々でも軒先に薪を高く積み、いっせいに点火します。
すると夜空はみるみるうちに真っ赤に彩られていくのです。
富士山登山道5合目からの山小屋でもお山じまいの火が焚かれ、頂上に向けて一つの光の線となって連なっています。
富士のお山と一体となった壮大な火祭り、それが吉田の火祭りです。
富士山型の神輿
2台の神輿のうち、ひときわ目を引くのが富士山をかたどった「御影(みかげ)」と呼ばれる神輿です。
1トン以上もある朱塗りの神輿は大変美しく、地元の人たちは「お山さん」と呼んでいます
この神輿は、男性しか担ぐことが許されません。
かつて富士山が女人禁制だった歴史を感じますね。
長柄の担ぎ棒が、前と後ろに2本突き出ていて、50人ほどの氏子がこれを担ぎ上げて、ワッショイ、ワッショイの掛け声とともに街中を練り歩きます。
この神輿は「あばれ神輿」として有名で、気が向かないと、国道の十字路であろうと構わずどかんと腰を据えて動かないことがあります。
時によっては町屋の軒先でお休みが入ります。
しかしそれはそれ、先導する神主も心得たもので、少しも慌てず、ゆっくりお山さんの出御をお待ち申し上げます。
そしてお山さんのご機嫌を直して動き出すと神主もまた先導し、あたり一帯は、またワッショイ、ワッショイの掛け声に包まれるのです。
火の粉の御利益とは?
吉田の火祭りのクライマックスは、松明が燃えさかる最盛期に、その下を歩くことにあります。
吉田の火祭りでは、松明の霊験あらたかな火の粉を浴びると「一年中風邪をひかない」といわれています。
夜20時頃がその時間に当たるので、その時機を逸しないようにしたいですね。
また、気付かないうちに火の粉で洋服に穴が空いてしまう事があるため、穴が空いても悔いのない装いでお出かけ下さい。
吉田の火祭りに行ったら食べてみよう
富士吉田の名物「吉田のうどん」
富士吉田の味といえば、なんといっても「うどん」です。
富士吉田の郷土料理「吉田のうどん」は、お祝いの膳には必ず最後にうどんが出るほど、うどん好きの土地柄に育った自慢の味です。
富士の雪どけ水で打ったコシのある麺を、かつおぶしの出汁とたっぷりの野菜でいただきます。
これに唐辛子、ごま、醤油、砂糖をこねた「すりだね」という薬味を加えて食べるのがポイントです!
おすすめの周辺観光地
吉田の火祭りに来た際には、周辺の観光地に行ってみましょう。
火祭り以外にも観光を楽しめば、充実した一日を過ごすことができますね。
●道の駅 富士吉田
富士山を間近に望むことができ、買う・食べる・遊ぶ・知る、が凝縮された、富士山観光の拠点として人気を集めている道の駅です。
富士山の地下100メートルから汲みあげられた美味しいお水が無料で飲めたり、富士吉田の郷土料理「吉田のうどん」を堪能することもできます。
お車で訪れたなら、臨時駐車場は早くても13時からの解放ですので、早めに来た場合はここでくつろいで時間をつぶすこともできますね。
道の駅 富士吉田 | |
営業時間 | 9:00~19:00(4~6、10~11月) 8:30~19:00(夏季7~9月) 9:00~18:00(冬季12~3月) |
定休日 | 年中無休 |
住所 | 山梨県富士吉田市新屋1936-6 |
マップ | |
お問合せ | 0555-21-1225(観光案内所) |
駐車場 | あり(収容台数:218台/無料 ) |
●富士急ハイランド
富士吉田市と河口湖町にまたいでつくられた、一大レジャーセンターです。
迫力ナンバーワンといわれる絶叫系アトラクションをはじめ、ファミリー向けも含めて40種類近くもの乗り物が揃えられています。
入園料金が無料ですので、お目当てのアトラクションだけ遊んで火祭りに出かけることもできますね。
これまでにない非日常を体験したい方や、思いっきり遊びたい方はぜひ足を運んで、楽しんで来てください。
富士急ハイランド | |
営業時間 | 8:30~19:00(夏季の場合)※変動あり |
定休日 | 不定休 |
入園料 | 入園料無料、フリーパス大人5700円・中高生5200円・小人(小学生)4300円・幼児2000円・シニア(65歳以上)2000円 |
住所 | 山梨県富士吉田市新西原5-6-1 |
マップ | |
お問合せ | 0555-23-2111(富士急ハイランド) |
公式HP | https://www.fujiq.jp/ |
駐車場 | あり(収容台数:5,000台/1,500円 ) |
吉田の火祭り アクセス・駐車場について
吉田の火祭りの会場である「北口本宮冨士浅間神社」までのアクセス方法をご紹介します。
電車の場合
富士急「富士山駅」下車後、徒歩約28分です。
車の場合
中央道河口湖ICより、国道139号線経由で約10分
臨時駐車場について
吉田の火祭りでは26日(月)に限り、会場周辺に、無料の臨時駐車場を3ヶ所、用意してくれています。
臨時駐車場の詳細を以下にまとました。
吉田小学校 | |
会場まで | 浅間神社まで徒歩 約16分 |
利用日時 | 26日(月) 13:00~23:00 |
住所 | 山梨県富士吉田市上吉田5-1-1 |
マップ | |
収容台数 | 200台 |
料金 | 無料 |
吉田西小学校 | |
会場まで | 浅間神社まで徒歩 約29分 |
利用日時 | 26日(月) 13:00~23:00 |
住所 | 山梨県富士吉田市新新原3-7-1 |
マップ | |
収容台数 | 200台 |
料金 | 無料 |
富士吉田市役所 | |
会場まで | 浅間神社まで徒歩 約36分 |
利用日時 | 26日(月) 18:00~23:00 |
住所 | 山梨県富士吉田市下吉田6-1-1 |
マップ | |
収容台数 | 200台 |
料金 | 無料 |
●北口本宮富士浅間大社駐車場
この駐車場は臨時駐車場ではありませんが、公式ホームページで「27日(すすき祭り)の指定無料駐車場」として紹介されている駐車場です。
場所は浅間神社と138号線を挟んで、斜め向かいにあります。
北口本宮富士浅間大社駐車場(指定無料駐車場) | |
会場まで | 浅間神社まで徒歩 約8分 |
住所 | 山梨県富士吉田市上吉田 旧鎌倉往還 |
マップ | |
収容台数 | 普通車:50台 |
料金 | 無料 |
その他の有料駐車場
上記の臨時駐車場以外の、会場周辺にある有料駐車場はこちらをご参照下さい。
交通規制について
吉田の火祭り開催中の2日間、メイン通り(137号線)を中心に広い範囲に交通規制がかかります。
規制時間は下記の通りです。
8月26日:16:30(一部18:30)~24:00(一部23:30)
8月27日:14:00(一部16:30)~18:30(一部16:30)
場所によって規制時間が異なりますので、現地の係員の指示に従うようにして下さい。
2019年の交通規制図はこちらをご覧ください。
出典;http://www.mfi.or.jp/himatsuri
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まとめ
火祭りの迫力、すすき祭りの荘厳さは、まさに日本三大奇祭にふさわしい壮大な火祭りです。
この日に参拝して浴びた神秘的な火の粉は、きっと次の年まで心の中で生き続けるのかもしれませんね。
ぜひ一度体験しに、足を運んでみて下さい。